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燃え盛る水 ーエゴン・シーレ 【ホロスコープから見る芸術家のひとかけら③】

エゴン・シーレ(Egon Schiele)
1890.6.12 生まれ   Tuulln Austria                                    
     (Astro  seek参照)

※見出し画像:《ほおずきの実のある自画像》(1912)
(Artvee.com より)

今回は、前回のクリムトから大きく影響を受けたシーレです。
シーレは『101人の画家』には載っていなかったのですが、前回書こうかななんて言った手前、書くことにしました。

シーレは18世紀末から19世紀はじめ、歴史的にも激動だったウィーンを28年という短い生涯で駆け抜けた、いわば「夭折の天才」です。


◎シーレのホロスコープ

さて、早速、そんなシーレのホロスコープを見てみます。

(Astro goldより)

地の要素、ありませんね〜。
生活、困りそうですね〜。
(私もないんですけどね〜)

と、いうのは置いておいて。

個人天体に、風と火の要素の強い人です。

火:  月・火星
風:  太陽・水星

外に向かうエネルギーがとても強く、活発な感じがします。
勢いのある資質を燃料に、人との活発なコミュニケーションの中で人生の目的を果たしていく、といったところでしょうか。

熱血!はつらつ! ほとばしる汗!!
といったイメージがわきます。


◎では作品は?  ー火と風の要素はある?


たとえば、こちら。

《死と乙女》(1915)
(Artvee.com より)


うーん、汗、ほとばしっていませんね。
むしろ汗成分は微塵も感じられませんね。

陰か陽かと問われたら、「陰です」と即答したくなる作品です。

ただ、画面から訴えかけてくるものは、すさまじいものがあります。
決して「閉じた」表現ではありません。

シーレの作品は、そのすさまじさからか、「素敵ね」と眺められるというより、強烈に嫌悪されるか強烈に惹きつけられるかというように、反応を大きく分けるような気がします。

4月初めまで開催されていたシーレ展では、シーレのことをこのように紹介していました。

世紀末を経て芸術の爛熟期を迎えたウィーンで活躍した画家。
(中略)
当時の常識にとらわれない創作が社会の理解を得られずに逮捕されるなど、孤独と苦悩を抱えながら、ときに暴力的なまでの表現で人間の内面や性を生々しく描き出した。

(「エゴン・シーレ ウィーンが生んだ若き天才展」ー展示とみどころ:エゴン・シーレについてより)
※最後の方にリンクあります

「暴力的なまでの表現」
ここに、火と風のイメージがつながるのではないでしょうか。
火が風で煽らるように、否応なしにこちらに迫り来る表現です。

そして、描かれているのは「生々しい人間の内面や性」
描かれているということは、シーレ自身が相対し、見つめ続けたものです。

人間の内面。いわば内側に向かっていく力。
これは、水の要素と重なります。


表現は火と風ですが、描かれているのは水なんです。


◎シーレの水の要素


ホロスコープから探してみると、こちらです。

(Astro goldより)

ASC(アセンダント): ♋️
金星: ♋️
MC: ♓️

人から見られやすい、目立つところにあるのが水なんですね。

また、目立つということで見てみると、アセンダントのルーラーの月も10ハウスにあり、社会の場という周りからよく見えるところにあります。

シーレも持つ月の象意(無意識、感情、不安、内省など)も、周りからはよく見えてしまうんですね。

月は金星とスクエアという、キツめの角度で関わっていますから、作品にシーレの内面性が色濃く反映され、今もなお多くの人に見られ、心を揺さぶり続けているのかもしれません。


◎おわりに

シーレは、28年の短い生涯に、自画像もたくさん描き残しました。

ナルシストと言われればそれまでですが、(実際にシーレはカッコよかったそうですが)、このような表現になるまで何度も自分に向き合うのは、ただのナルシストにはできないのでは、と思います。

自分の内側には、決して気持ちのいいものだけがいるわけではないからです。

外に向かった方が、楽な場合さえあります。

でも、シーレには、内側を見つめ続ける強さがあった。


シーレには限らず、芸術家は普通ではできないような深みまで突っ込んでいく人が多いです。
通常使われる元気とは違った意味のバイタリティーがあります。

私のような凡人は、自分では到底到達できない深みを手軽に体感したいがために、作品を見にいくのかもしれません。

今回、シーレの作品に何か心を動かされたものがあった人は、シーレの表現したかったものに、自分自身が生きるために必要な何かが隠されているのかもしれませんね。



※東京都美術館で開かれていたシーレ展、サイトがまだ見られます。
このサイトの解説は、年表も含めてとても見やすくわかりやすいのでおススメです。写真や作品画像もいっぱいです。



◎おまけ

ちなみにこちらは、前回のクリムトの《接吻》(1908)を参考にしたと言われる作品。
構図など、似ている要素や違いを探すのもおもしろいです。

《枢機卿と尼僧(愛撫)》(1912)
(Artvee.comより)