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2023/1/19 エリザベート感想

博多座 マチネ

 中止にならなくてよかった! 二階席の右端から二つ目だったけど、もうここにいるだけでいい。

 これまでの井上芳雄の概念が覆された。太めの低い声が最高。めちゃめちゃ歌うまい。知ってた。ただ、エコーが邪魔だった。お散歩パパにもエコーかかってたから、たぶん生死で分けてるんだけど、とにかく邪魔。生声聴かせてほしい。初見さん向けなんだろうという感想を見たし、私もそうだと思うけど、もっとゆるくていいはず。調整してほしかった。
 井上閣下は人間の範疇だと思う。井上さんって、ときどき「この声の響き方、ザ・井上芳雄だな」ってときあるよね。

 愛と死の輪舞の癖がめちゃくちゃ強い。劇団四季みたいな癖。間の取り方と鼻濁音だと思う。階段降りる前にエリザベートと目が合って、もう歌い出す。こんな遠距離で一目惚れした閣下知らない。エコーが邪魔だけど美声。歌うまい……生きててよかった。あと、お姫様抱っこがあってよかった!
 目覚めたエリザベートと見つめ合ってるとき、猫背に見えた。ここからしばらく、もうちょっと胸張って立ってほしいなーって思ってた。
 台詞の声は比較的高めというか地声? で、歌になると低くなるから、ちょいちょい驚かされる。
 結婚式の高笑いが長かった。すぐ右側の壁にスピーカーがあって、急に笑い声が近くで聞こえておもしろかった。結婚式の手遊び、公演によって変わるんだよね……各閣下の手遊び集が欲しい。

 最後のダンスがすごくよくて拝んだ。井上閣下は絶対愛と死の輪舞の方だと思ってたんだけど、断然最後のダンスがよかった。帝王みがヤバい。限りなく人外に近いけど、すごい帝王だった。強い。ぐいぐい行く。めちゃくちゃ肉食系だし、自信満々だし、エリザベートは俺に惚れないわけがないって信じてそうな閣下。マントばさーって広げながら退場するのかっこいい。最後のダンスだけじゃなくて、いろんなところでマント広げて退場してく。しかもマント扱い慣れてて、中指と薬指に挟んできれいに広げる。見てしまう。

 長女の死体を見せるとき、階段途中で止まって台に肘ついてにやにやエリザベート見てて、たぶんわかってやってる。これをやったらこいつは俺を見るって知ってる。闇が広がるもよかった。低めの太い声で威力がある。愛希エリザは拒否り方が半端ないんだけど、井上閣下めげなさそうで安心して見られた。
 わりとエリザベートをにらむ閣下だった。険しい表情してることが多い。イライラしてる? エリザベートが自分の方を向かないからかな。そのわりに、なんか謎の大笑いがちょいちょい入る。声は出さないんだけど、額に手合てて上向いて口開けて笑ってる。怒ってるか笑ってるかで、情緒が落ち着かない閣下だと思った。まあ、情緒落ち着いてる閣下がいるかっていうと、そうでもないんだけども。
 同行者――初見――は「俺になびかないとかおもしれー女って思ってそう。恋愛感情はあんまりなさそう」って言ってた。確かに、エリザベートを心から愛しているのは感じられなかった。

 ターンがえらい美しい。

 カフェで椅子に座ったときは足組まなかった。ここも組む閣下と組まない閣下がいるから、見てると楽しい。舞台中央でルキーニが頭下げたときに、頬をするっと撫でるの何だったの。動揺したんだが。あと二回くらい濃い絡みがあった。舞台前方でしゃがんでるルキーニの後ろから近づいて、抱きしめるまではいかないんだけど、腕を回したり……あれ、どの歌だったかな。井上閣下、異様にルキーニ好きじゃない?
 最後通牒、椅子の裏から出るとき階段上がってくるのが見えた。やっぱ席の左右で見えるものが違って楽しいな。ロウソク手で消すバージョンは初めて見た。井上閣下、なんであんなにエリザを見ないんだろう。デスク挟んで見つめ合わなかった。一幕最後の三重唱も、ほぼ見ない。少し左の方に向けて愛してるって言う。何なんだろう。愛を請わなくてもいずれ俺のものになるって強気の表れなんだろうか。

 何度でも言うが、コンダクターへ拍手するタイミングがあるミュージカル大好き。

 二幕冒頭、回転台で運ばれてくるとき、鞭を垂らしてダンサーズの一人と釣りごっこみたいなのしててめっちゃ楽しそうだった。正面向いたあとも別のダンサーズに鞭の柄の先向けてちょんちょんしてた。身内にしか興味ないのかと思ったけど、ちゃんと民衆にも目を向けてた。エリザベートは見ないのに、他の子には視線が行く。どういう感情なのかよくわからない。
 「もう誰にも歯車を止められはしないさ♪」が私の好きなリズムで大興奮だった。
 私が踊るとき、最初にマント広げてひざまずくのかっこよかった。マントの素材が薄い? ふわぁっとなる。手を差し出すのが美しい。ストレートに出すんだけど、きれい。「俺が望むときに好きな音楽で♪」のあと、かなり早い段階でエリザが手を引いてしまってて、もうちょっと駆け引きして! と思った。最後のフレーズ、閣下声出し過ぎだったのでは。主旋律ちょっと消えてた。全体的に全力でガンガン歌うのに加えて、たぶんエコーが悪さをしている。

 子ルドにちゃんと反応する閣下でよかった。「友だちさ」がやさしい声だった。子ルドの話を聞いてあげてるのがわかっていいんだけど、姿勢が低すぎて子ルドの頭と閣下の顔がだだかぶった。階段に座ったあと、脚投げ出して一段か二段上に肘ついてもたれるような体制になってた。こんなだるだる閣下初めて見た。子ルドのピストル奪うとき、小指立ってるのがすごい気になった。
 そしてピストル舐める。なぜ。闇が広がるリプライズでも舐めるし、何ならルキーニのナイフも舐める。何。井上閣下のヤバさはヤバい仕草で表現されてる。

 ドクターで遊んでくれる閣下でうれしかった。わりとぎりぎりまで声変えてた。椅子の上に一回上がって、降りて二歩踏み出して「違う!」だったんだけど、結構びたっと止まってた。愛希エリザも動きが激しいタイプだから、穏やかな殺陣みたいで見ていて楽しい。椅子から降りるとき、わざと足踏み鳴らしてるのがわかる。井上閣下は足音を聴かせるかどうかをちゃんと考えて歩いてる。
 「あなたとは踊らない」って言われたときに怒る閣下は初めて。すごいエリザにらんでた。井上閣下は感情を素直に出すタイプなんだな。腹が立ったら怒る、おもしろかったら笑う。その度合いや理由が少しずれてるから、観客からすると理解できない人になる。人間の範囲で演じているから、ミステリアスではなく単純に理解できない人で、だからこそ怖い。檻に入ってない猛獣の印象。

 闇が広がるリプライズももちろんかっこよかった。永遠に聴いていたい。やっぱ最初のサビは上パートなのね。井上ルドルフ時代のCD聴き慣れてるから落ち着いた。が、がっつりルドルフを食ってた。ルドルフこの曲しかないんだから譲ってあげてよ……それにしてもエコーが悪さをする。カサカサシーンでガって踏み出して迫る。一歩が大きい。迫力があってかっこいい。ルドルフへのボディタッチが多い気がした。パーソナルスペース狭いタイプの閣下か?
 「今なら救えるハプスブルク♪」のところ、すごい悪い顔してた。ルドルフ座らせて周り見せてるときも悪い顔してた。ダンサーズとレジスタンス混ぜるとき、腕を上げて水平に交差させてた。結婚式の手遊びのときも思ったけど、井上閣下の振り付けは水平方向への動きが多い。

 もぐもぐタイム、井上閣下は唇触ってから手を伸ばす。投げキッスでは? 結婚式で一回すごく投げキッスだ! って思った。あるいは、マーキング。
 ルドルフのお墓、閣下じゃなくてダンサーズが開けてなかった? 閣下仕事しなよ。お墓から出てくるとき、「この世で休めない♪」くらいでもうスタンバってるんだ。思いの外早かった。ボードの上座って、ずるって滑って場所調整するのおもしろかった。ここでも結構うしろに肘をついてて、姿勢がだるだる。エリザベートを引き寄せるとき、やっぱうれしそうな顔するんだな。そのあと怒るんだけど、突き放すっていうより怒ってるんだよなぁ。井上閣下なんであんなにカリカリしてるんだろう。

 白閣下のとき、左右でデザインの違うブーツ履いてた。右足にだけ、横向きの長方形が縦に並んだような装飾があってかっこよかった。「お前が招いたんだ」も怒ってない? フランツが現実逃避するのが気に入らなかった? 「彼女は俺を愛している」に必死さがなかった。あんまり愛されたいと思ってないのかなぁ。エリザを好きな気持ちも、好かれたいという欲求も、井上閣下からはそんなに感じられないんだよね。確かにエリザには固執するんだけど、恋愛感情には見えない。動機がよくわからない。
 井上閣下はちょいちょい腕を組む。初めて見るタイプ。
 エリザベートが刺されたあと、てぃるるるるーんって効果音より、だいぶ前に出てくるって今日初めて知った。最後、( ゚Д゚)みたいな顔してたんだが、あれ何。どういう感情なの。燃え尽きちゃったのかなぁ。恋愛感情があれば、ここでようやくスタート地点に立ったわけだけど、ただこっち見てほしいだけだと、もう終わっちゃったから、このあとどうしようって思ってるのかもしれない。

 スタンディングオベーションが早い。コロナでカテコの回数が減ってたとしても二回目はちょっとな……スタンディングオベーションって、後ろの席の視界を邪魔するじゃない。たとえば後ろが膝の悪いおばあさんだったらって考えると、もう一回くらい座ってみさせてあげたいなって思うのよ。私は前が立たない限りは座ってる派。どちらがいいということはないけども、今回あまりにみんな早く立つから、ちょっともやっとした。
 終わりのアナウンス流れてもみんな無視して拍手してて、どうなるかと思ってたらもう一回出てきてくれたのはうれしかった。でも、やっぱアナウンスは従った方がいい。三回目がもう二人だけで、閣下がめっちゃシュバッてエリザに腕貸してて笑った。四回目、最後はめっちゃきれいにターンしてくれた。ちなみに、アナウンスは二回目が流れた。

 終わったあとに同行者とあーだこーだ言うの楽しかった。そこでだいぶしゃべって発散しちゃったから書き漏らしがあるかもしれない。

これまで生だったりDVDだったりで観た個人的な各閣下の印象

雨に打たれるかわいそうな子猫がいたとき……

山口閣下は気づかない。偉大な帝王様はお目にも留めてくださらない。
姿月閣下は一瞥して終わり。些事って思ってそう。
城田閣下は興味津々。しゃがみこんでじーっと見てる。五分くらいすると猫が消えて、けほけほって毛玉吐いてる。
それを見てショックを受け、黄泉に引きこもって出てこなくなる古川閣下
一連の流れを見て大爆笑する井上閣下

……あながち間違ってないと思うんだけど。

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