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初ホタル

夕方の散歩を終え、愛犬がごはんを食べているのを眺めていたときのこと。愛犬の飲み水の水面で、小さな黒い虫がジタバタともがいているのが見えた。

「あらやだ。不殺生、不殺生」
ねじったティッシュですくってみると、その虫の姿には見覚えがあった。

「ホタルだ」

赤い頭、細身の黒い体。
お尻のあたりは白っぽい。

愛犬の手が届かない、庭の木の葉に乗せる。最近はめっきり数が減ってしまった。私が子供の頃には、夜になるとたくさん飛びまわっていたのに。

「頑張れよ」

オスかメスかわからないけど。
恋の季節であろうホタルに激励する。
この庭で一生ひとりぼっちでは寂しかろう。

せめてこの子が恋のお相手と会えるくらいには、減らないでほしいものだ。


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