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忘年会へ行ったら「小説を書く人に100の質問」状態になった話

去年の暮れ。
私は勤め先の合同忘年会へ初参加してきた。

バツイチ独身子供なしの私に、うっかり「子供何年生だっけ?」とか聞いた挙げ句に気まずい顔されるのが嫌で、「独身指輪」をつけての参加。

でも結局面倒くさくなり、
「〇〇で5月からお世話になってます高橋和珪わけいです。〇〇出身、44歳。バツイチ独身子供なし。愛犬はゴールデンレトリバーと日本スピッツ。学生時代はバレーボーラー。20代で病を得てUターン」
自己紹介で全部放出してきた。
ザワッとしてたけど、(多分)ウケてる寄りのザワつきだったので良し。

ステージから自分の席へ戻るとき、一番偉い人が
「すごいなぁ……」
ってつぶやいていた。何に感心してくれたのか。私の人生にか、それとも包み隠さず大放出しちゃう性格についてか。

宴の冒頭でぶちまけたおかげで、狙いどおりその日私は、無駄話(子供いる前提の雑談)をくらわずに過ごすことができ、満足している。
気を使わせたであろうことは申し訳なく思うが、私もいいかげん当たり前に子供いる前提の質問から始まる雑談に辟易しているのだ。

――が。そんなことより。
そう。今となってはバツイチだの子供なしだのの件は「そんなこと」になり下がった。

私はこのあと、そんなことよりさらに戸惑いを覚える質問砲を受けまくるのである。

乾杯、自己紹介、しばしご歓談。
さて、ぼちぼち偉い人たちにお酌回りに行こうかな、と立ち上がったそのとき。隣の席の、若手男性職員が言った。

「高橋さん、小説書いてますよね」

――――――え?

「ちょっとぉおおおお! なんでそれ知ってんのぉおおおお!?」
慌てて席に戻る。
お酌に行けなくなってしまった。

「〇〇さんたち(私の上司)は高橋さんが小説書いてるの知らないんすか?(ビールぐびぐび)」
「えっ!? そんなこと言うわけ……あ、入院中ヒマだったから小説書いたら賞金もらったみたいな話は流れで言ったかな……」

以前は徹底的に「隠れ小説家」だったけど。今は前ほどかたくなに秘密にはしていないから、時には話の流れでペロッと言っちゃうこともある。
このときは上司と税金についての雑談をしていて、それで小説書いて賞金もらった、30万円のうち〇万円を税金で引かれていた、という話をしたのだった。

「へえ、すごいっすね。最近は書いてないんですが?(ローストビーフもぐもぐ)」
「えっ!? えと、フルタイムで働くようになってから日課になかなか組み込めなくて。短いのなら時々書いてるけど……」

「パソコンで書くんすか? それとも手書き?(唐揚げモグモグ)」
「えっ!? えと、構想段階は手書きで、パソコンで清書するみたいな……。でも短いのはいきなりパソコンって場合もあるし、ものによるっていうか……」

「オレあんまり小説って読まないんですけど。でもあれっすか? 『なろう』とかですか?(お刺身もぐもぐ)」
「や、『なろう』は多分私のカラーには合わないっていうか。や、非難してるんじゃなくて。私が書くものは『なろう』では需要がなさそうな気が……あ、でも角川か。だったら合ってるのか? 前に応募した作品、角川系で3次審査まで行ったしな……」
「え、3次? マジっすか! スゴイッすね!」

ていうか、スゴイッすね、じゃなくて!

「え、じゃあ高橋さんが小説……(もぐもぐ)」
「ちょっとお願いだからマジで一旦黙って!」

あとそのもぐもぐもヤメロ(笑)

今となってはそんなに秘密にするつもりもないが、それにしたって声が大きすぎるんだよ若手くん。

――黒歴史などと言うつもりはない。
むしろあの頃の私の頑張りっぷりは輝かしい。

3次審査まで行ったのは、2013年の第20回電撃大賞。……そうかもう10年以上前になるのか。
応募総数はなんと史上最多の7523作品。イラスト大賞、学校大賞を除いた小説大賞だけを見ても、その数6554作品。

2次を通過しても、私の応募作を含め、まだ235作品も残っていた。そのあと4次審査があり、5次か6次が最終選考だった。

そんな状況での「3次まで行った」である。
3次まで行ったというか。
3次までしか行ってないというか。
今思うと応募作のタイトルがまったくイケてないし、電撃っぽくもなかった。

そのときの大賞は2作品。『ゼロから始める魔法の書』と『博多豚骨ラーメンズ』。作者お二人の受賞コメントは、いろんな感情が入り乱れながら読んだ。悔しさ、うらやましさ、執筆方法への興味、私だったらなんてコメントしようか、などなど。
『博多豚骨ラーメンズ』がアニメ化したときも同じような思いを抱きつつ、毎週録画して見ていた。

甘酸っぱいなぁ。
当時私は30代だったけど。
あれは一種の青春だったな。

あの頃の私よ、頑張ったね。
今年の私も、私なりに励むよ。
今は夢の形がちょっと変わったけどね。

「ところでなんで私のこと知ってんのよ!」
「妻が知ってたんです。あ、僕の妻、〇〇っていうんてすけど」

存じませぬよー。
でもよくよく聞いたら、多分だけど、本名で参加した地元のイベント繋がりで会っていてもおかしくない方だった。そんで私も、イベント名のタグつけてツイートしたりnote書いたりもしてたから、私の本名と筆名の両方を知っていても、おかしくない。

迂闊だった。
や、だからもう前ほど秘密にはしてないけど。
うーん、でもやっぱ、うろたえる。



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