マガジンのカバー画像

生きる力

52
戻ってきた実家での田舎暮らし。里山の風景。染みるご近所付き合い。親類のありがたみ。母から学ぶ農作業。できなくてもいい。知っておきたい。
運営しているクリエイター

#岩手県

冬至過ぎの朝

午前5時50分。 冬至はとうに過ぎたというのに。 まだ夜は明けず、たっぷり真っ暗闇。 まだ眠そうな10歳の愛犬を連れて、散歩コースの畑へ出る。ここまで来れば、愛犬もウキウキと軽い足取り。 かと思えば今度は枯色の草むらへ鼻を押し付け、タヌキの残り香でも追っているのか。 愛犬を待つ間、私は視線を上げた。 ご近所さんちを見る。 これがすっかり癖になった。 庭のセンサーライトがついた。 あちらも今から出発らしい。 ほどなく、庭から小さな明かりが、トントントンとおりてきた。目

ー7℃の朝

本州で一番寒い藪川(岩手県盛岡市)や区界(岩手県宮古市)ほどではないが、我が家(岩手県一関市)でも先日、ー7℃という凍てつく朝を迎えた。 「おはようさん」 「はいおはようさん! お茶っこ入れっから飲まいん!」 朝、我が家ではまずお茶を飲むことから始まる。 先に起きてヤカンで湯を沸かしていた母。いつもは沸騰するとポットへ入れ、ポットからマグカップへ、マグカップから急須へ入れる。 緑茶に使う湯は、温度が高すぎない方がおいしくなる。我が家ではいつもこうやってマグカップを温めつ

一歩ずつ、春

日本海側ではまた雪の空とのこと。太平洋側の岩手にある私の住みかは、いつも奥羽山脈が雪をブロックしてくれる。雪かきが大変と言いつつも、日本海側に比べれば大したことはない。奥羽山脈サマサマである。 今朝は庭に雪が少々あった。せっかくマイナスじゃない気温の日が続き、庭や路面もすっかり乾いていたのに。側溝に詰まっていた氷もようやく掻き出せたのに。 だけど雪の質はこれまでとまったく違い、水分を多く含んだ、重たい雪。庭に出ると、そんなに寒くない。庭の蛇口もクルクル回る。朝イチでも蛇口

生きる力

これからの季節は草との戦いである。私は免疫系の持病の関係であまり無理ができないから、毎日ちょっとずつ、カマで手刈りしている。 父の葬儀からやる暇がなく、のびのびと育ってしまった畑周りの草。母が出かけているから、今日は私だけ。将来ひとりになったら、こういう感じで『リトル・フォレスト』やるんだろうなぁ……などと思いながら、せっせとカマを振った。 大きいだけの田舎の家と畑。将来私が年老いたとき、ここを管理しきれるだろうか。母が元気なうちに、同じことを私もできるようになっておかな