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生きる力

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戻ってきた実家での田舎暮らし。里山の風景。染みるご近所付き合い。親類のありがたみ。母から学ぶ農作業。できなくてもいい。知っておきたい。
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2022年1月の記事一覧

イトコに響いた、電話番号一覧を壁に貼る理由

昨年コロナが落ち着いたとき、隣県に住む30代のイトコ姉弟が父にお線香を上げに来てくれた。父との思い出や近況をひととおり話したあと、イトコたち――特に親と住んでいる弟の方が、私と母にいろいろと相談をしてきた。 今後親に何かあったとき、まず誰に連絡すべきか、お墓は新しく建てるのか、それとも実家のお墓に入るのか、などなど。子供の頃のイメージしかなかったが、彼らもそういうことを考える世代になったのだ。 帰り際、姉の方が廊下の壁を指さした。そこには電話番号を書き連ねた、大きな紙が貼

江戸時代の商人は火事のとき真っ先に顧客台帳を守ったそうな

江戸時代の商人は、火事のときまず、金品よりも顧客台帳を最優先に守ったらしい。商売を再開したときのためにも、お得意さんとの繋がりは絶対に失ってはならない大切なものということなのだろう。 うちは商人家系ではないものの、年を重ねるごとに人との繋がりの大切さは身に染みるようになってきた。特に去年父が亡くなったとき。親類やご近所さんのありがたみは痛感した。   * 各地でまん延防止等重点措置が頻発していた頃である。葬儀を行うにも、他県の親戚や姉夫婦には頼ることができず、私と母の二

冬道は運転しないに限る

私の地元では庭や路面が凍結していると、 「タッペになってっから、気ぃつけらいよ」 などと言う。今冬は寒波や雪が多いのか、「タッペ」と言わない日はない。 こういうときに運転すると、いつも父の声が蘇る。橋が見えてくれば、「橋の上は気温が低くて凍ってっから、スピード落としてから入れ」。長い下り坂では、「下り坂は滑っからブレーキ踏むな」と。 だがこの「下り坂は滑っからブレーキ踏むな」は、ちょっと言葉が足りない。 まだ冬道に慣れていない頃、父の言葉をそのまんま受け取ってしまった私