【一話完結】ワラビアンナイト コトノハの民
ワラビアンナイト
コトノハの民
大陸の南側にある港町は、いつも活気に満ちていた。海には商船が並び、陸には市が立つ。
そこへ――
「馬が暴れてるぞ!」
「逃げろー!」
人々の叫び声と悲鳴、そして馬のいななきが響き渡った。
市で物色していた商人イシャンの耳にも、それは届いた。逃げろ、という叫び声と、露店の品や木箱が蹴散らされる音が迫り、やがて人々が散る中から一頭の馬が姿を現した。
馬はイシャンを横切り、外衣をまとった一人の女めがけて突進していく。
「あんた逃げろ! 馬が……