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書呼吸

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小説。エッセイ。日記。文章。言葉。書いたり、書くのをやめたり、書くことの意味が変わったりしたことについて――等々。書呼吸(かこきゅう)とは、「呼吸するように書く」のではなく、「書…
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#心の変化

天の祝福

イギリスの人気番組『ブリティッシュ・ベイクオフ』。アマチュアのベイキングコンテストで、イギリスでは社会現象にもなったとか。私も大好きで、シーズン7まで毎回録画し、何度も繰り返し見た。 (『Dlife』はとても良いテレビチャンネルだったのでできれば復活してほしい) どのシーズンもファイナルは特に好きで、優勝者の発表は私も固唾をのんで見守り、最後は拍手で称えながら涙したものだった。 最近Eテレで再放送されたシーズン1のファイナルは、なぜかとても、私の心に刺さった。 優勝者発

迷っていた私への御神託

30年以上の付き合いになる同郷の親友が、私の生態を見て、「書呼吸」という言葉をつくったことがある。もう何年も前のことだ。 「それって『呼吸するように書く』ってこと?」 「違うよ。和珪ちゃんの場合はね――」   * この冬、なんの迷いもなくやっていた「書く」ということにつまずいていた私。あれほど好きで、書くことで救われてきたことだってあったのに。書かなくてもいいのでは? などと書くこと自体に疑問を抱くまで落ちるありさまで。今までの人生でそれはなかった現象だった。 春にな

「飽き性」じゃなくて「2周目」かもしれない

牡牛座は粘り強く、ひとつのことを続けることができる、という説明をよく目にするが、残念ながら私の場合は当てはまらないのではと思う。 例えば長編小説を書くことは、好きだが時間がかかる。そうすると作品を世に出す頻度が少ないことで情緒不安定になり、短いスパンで書けるエッセイに手を出す。 エッセイを頻繁に書き上げることで情緒は安定し、どこかに応募したり、オンライン公開などしていると、ほど良く「やってる感」を得られる。しかし間もなく「小説を書くことにどっぷり浸りたい!」という反動がや

「一日中書いて暮らしたい」はどうやら卒業

前は「一日中書いていたい」と思っていた。「創作だけに没頭して暮らせたらどれだけ幸せだろうか」と。今は――実家で両親と暮らすようになってからだろうか、ちょっと変わった。 家族が真ん中。 家族とすごすこと、家族の一員として家の仕事をすることの方が大切になった。 じゃあ書くことはどうでも良くなったのか? そうではない。「書くことと暮すことは、同列ではない」と思うようになった。書くことは、暮らすことの上に移動した。――上位だということではなくて。例えるなら、小学生のときに書いた