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詩四篇(2021.09.10)

1
花の香りは
いま 花をこうして買ってきても
気づいたよ 部屋は香らない
いつか香りをさせていたのは君だったのか
花に言い聞かせ
君を思い出す香り匂わせようとするが
毒を持つ花だから あまり
近づかないほがよろし
無理にとはいわないけど

ねるぴ ハーモニカ病の毒を
夜鳴らすと蛇くるよ
かやらん ドラムス日の出的な
スティックを落とした

青い緞帳の後ろでは
母たちが若いままで待っている
君はいない
君とはまだ別れていないから
出会ってすらいないからだ
それって小気味いい
私だけがこの歳でこの体で
一人で客席にいる と思ったら
私以外にも誰かいる それは
寝ぼけたいつかの私や 疲れた私
顔の角度を変えればモデルになれると
信じて鏡を見つめてきた私

ぴゃらびゃら 紙鉄砲ほんとのハンドガン
よりも初速ははやいぜ
がちがちり 鉄製の知恵の輪
いま一番奥にいるって感じ

とれてばんらん 左右のスピーカー
驚きの犯行の手口が監視カメラに
きゆっとすみそで 紙鉄砲ほんとの銃は
舐めると油の味もするぜ


2
春から数えて三年目
また春 また春
春から数えて三時間
まだ春 もう夏
暮らすのは箱全部開ける前
もう生活は始まっているんです
だから僕はここにいて
お湯を沸かしたりしてるのだ

宵越しのお茶っ葉は毒だって
いつか聞いたけど
出るんだもんねまだまださ
だから僕はここにいて
お湯を沸かしたりしてるのだ

夏から数えて二年目で
まだ夏 また夏
赤くて低い木の下で
秋じゃないのに枯葉をはいて
どうやらここまで来たんだと
地声と裏声の重ねた歌で
明度や透明度を変えて
体を無意識に明滅させて
猫が膝に載ってるの
気付かぬまんま
僕はここにい続けて
お湯を沸かしたりしてるのだ

飲まない飲まないよ
お風呂に足したりもしないんだよ
掃除にも使わないよ
乾燥対策ともちと違う
やかんの湯が空になるまで
なんども
お湯を沸かしたりしてるのだ
それが君を待つ一番楽な方法だからだ
やかんのぴーとドアのチャイムのどっち
先に鳴るのは
決まりきったことだけど
お湯を沸かしたりしてるのだ


3
君よ
髪を伸ばすのはそろそろよして
まるで僕の趣味でそうさせて
いるみたいじゃないか

休み明けに誰かが君に
髪が伸びたねって言った時
同席していた僕は
赤面したんだよ

君よ髪を伸ばすのはそろそろよして
高校時代は坊主頭だったって
言ってたじゃないか
シャンプー代は僕の知る由無し

休み明けに誰かが君に
髪をまだまだ伸ばすのって尋ねた時
同席していた僕は
その場で切ってやりたくなったんだ

僕と付き合う人はみんな
髪を伸ばすんだ
それは僕の趣味の要請?
違うんだよ違うんだ
僕はただ一言囁いてしまうだけなんだ


4
畳鰯みたいな目ん玉があぶくで
水面覆う油のぷちぷち
そこで泳げと猿が言う
いや言わない
見えてることと
いや見えないことと
川は生活している
川でじゃない 川が
猿が 猿でじゃない
僕が泳ぐ
小雨の宴
水面はぱらららら

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