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高齢者における持久力の重要性

特別にスポーツを行っていない人にとって全力を発揮するような運動はごく稀な出来事。
歩行や階段昇降、そして荷物の運搬などが日常生活における負荷のかかる身体活動だが、全身持久力や筋持久力が低下すれば、長時間の歩行や階段昇降に支障をきたし、疲れやすいので出不精となり、ますます体力が低下するといった悪循環に陥る。

そのため一般の高齢者にとっては、瞬発力、パワー、最大筋力といった体力よりも低強度の運動を長時間継続するような全身持久力や階段昇降や荷物の運搬などに耐えられる筋持久力が重要な体力要因といえる。


加齢に伴って持久性能力が低下する要因

運動能力の低下は加齢に伴う身体の各器官の解剖学的(形態的)、生理学的(機能的)な変化に起因する。

例えば骨格筋の萎縮は避けることが出来ず、筋量の減少に伴い筋力は低下する。またエネルギー生成能力に関わるミトコンドリアは老化に伴い数が減少し形態も変わることが知られている。
したがって、たとえ同じ筋量であっても高齢者の筋内における基質(糖や脂質)の酸化能力(エネルギー供給能)は低下する。そのため筋持久力は低下を余儀なくされる。
また高齢になると肺胞隔壁が破壊され、解剖学的死腔や生理学的死腔も増加し、呼吸能力に関わる肺活量や分時換気量は減少する。循環を司る心機能も低下し、最高心拍数は加齢と共に低下する。

以上のような呼吸循環機能の変化と先に述べた筋の形態・機能の変化を受け、全身持久力は著しく低下する。


最高心拍数の加齢変化

一般に運動習慣があって持久性体力の高い人の心臓は形態的に心容積が大きく、心筋の収縮性が高いことがわかっている。

そのため、1回の収縮で送り出せる血液量が増え、安静時心拍数や同一強度の運動中の心拍数は運動をしていない人に比べ徐脈化する。一方最高心拍数は若年者の場合、トレーニングや体力レベルと関係しないことが知られている。しかし、年齢との関連は強く、加齢に伴って低下する。また研究報告によって最高心拍数の加齢低下の傾きが異なることも指摘されており、その要因の一つに体力やトレーニング状況などが関係していて、最高心拍数の加齢による低下はトレーニングによって緩和されると考えられている。

最大酸素摂取量の加齢変化

全身持久力の指標である最大酸素摂取量は呼吸、循環機能、筋機能など多くの身体機能に規定されるため、加齢に伴ってほぼ直線的にかつ顕著に低下することが知られている。

20歳時点を基準にすると70歳時の最大酸素摂取量は男性で約50%、女性では60%にまで減少する。


持久力の加齢変化に及ぼす運動の効果

運動習慣のなかった人もトレーニング によって体力は高まるため、年齢を重ねてもしばらくの期間(数年間)は持久力は増進する。しかしトレーニング 効果は無限ではないため、ある期間増加したのちアスリートの加齢変化と同様にトレーニングしているにも関わらず持久力は低下していく。また運動を開始する年齢が遅れることによってトレーニング効果が小さくなる。高齢になってからトレーニングをしても体力レベルの改善は若い時に始めた場合よりも小さくなる。

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