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2022.12.08 〜海からの贈りもの〜

この本との出会ったのは、大洗にある里海邸という旅館の本棚だった。
旅館の女将さんのコレクションが並ぶ中、表紙が素敵だったという理由でたまたま手にとった一冊が、アメリカの女性飛行家が女性の生き方について綴った本だったというのは、なんというか不思議な縁を感じる。

主人公は、女性飛行家であり、妻であり、6人のこどもの母親でもある。社会的な役割が増えれば増えるほど、積み重なっていく日々の猥雑さ。
それに飲み込まれそうになり危機感を覚えた彼女が、離島にひとりで滞在し、女の幸せについて内省した記録がこの一冊。

発行は1967年だが、筆者の感じていることすべてに共感しきってしまった。
母であること、妻であることで、女性は本能的に自分自身を与え続け、そして「こぼしてしまっている」と筆者は語る。
そうして自身を失ったことで生じる「飢え」は、なかなかその原因を自覚することが難しい。だから本当の意味で満たす方法も分からず、日々を忙しくすることで、どうにか隙間を埋めようとする。しかしながら、そうやって穴を塞いだところで、心はぽっかりとしたままなのだ。


離島でひとり過ごす中、筆者はシンプルな生活が精神の自由と安定をもたらすことを思い出し、「いま、ここ」に集中する生き方を通じて、充足した生活の実感を取り戻す。一人になり自分を満たしながら、パートナーやこどもとの関係、そして自身の将来について想いを馳せ、再び慌ただしい日常で生きていく強さを取り戻していく。

忙しない日々に摩耗してしまっても、この本を持って少し遠くにでかけたら、きっと大丈夫。そんな気持ちにさせてくれる一冊だ。

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