見出し画像

2022.10.24〜常識のない喫茶店〜

「働いている人が嫌な気持ちになる人はお客様ではない」
そんな理念を掲げた喫茶店で働く筆者が、時に「出禁」、時に「塩対応」を使いこなしつつ、日々を生き抜く様を綴ったエッセイ。

もう、とにかくめちゃくちゃ笑った!筆者の人間観察力の鋭さと、その描写力がすごくて、店内の様子がありありと浮かんでしまうし、文章のリズム感の良さが相まって、繁盛している喫茶店の音まで聞こえてきそうな感覚に陥る。

「働いている人が嫌な気持ちになる人は、お客様ではない」
すべての飲食店でこの理念が大切にされていてほしい。横柄な態度で店員に接する人が、少なくないことに、本当にびっくりしてしまう。学生の頃自分も接客のアルバイトをしていたから、筆者から吐き出される言葉の数々には、首を深々うなずくばかりだった。

飲食店の店員という立場でなくても「いや普通に考えておかしい」ということを、私たちはなぜか我慢してしまう。そうして心の何かがどんどんと削られ、失われていく。この本の中では、筆者だけでなく同僚やマスターの「いや普通に考えておかしい」がストレートに意思表示されていく。それがあまりに痛快。でもそれによって、お店の平和がしっかりと守られるのだ。

温かさ、優しさを本当に大切にしたいなら、「耐える」ことは本当に最適解なのか。
自分の大切なものを守り抜く強さを、この本は与えてくれる。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?