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2022.12.21〜DarkHorse 好きなことだけで生きる人が成功する時代〜

好きなことだけで生きる。
タイトルどおりそんな人生が送れたら幸せだなと誰もが思うが、果たして私達は自分の「好きなこと」を、本当に理解できているのだろうか。
そんなことを考えさせられる本だった。

タイトルにもなっている「ダークホース」とは「既存のやり方とは異なる方法で、成功に到達された人」をいう。
大学を中退したり、職を転々としたり、一見するとどこに向かっているのかわからない人たちだが、彼らなりの方法で着実に「自分にとって最適な道」を選び取っている。
この本は、こうした何百人もの「ダークホース」に対し、ハーバード教育大学院の研究者である著者が、インタビューを行い、「ダークホースの思考法」を科学的な研究をもとに、世界で初めてマニュアル化したものだ。

テクノロジーの発達により、私達はより「パーソナライズ」された情報を選べるようになった。電車の隣に座る人とスマホに映る広告は異なるし、ECサイトも動画配信サービスも日々私達の好みを学習してくれる。
画一化、体系化された学習環境や労働環境が用意された「標準化の時代」から、自分だけの興味関心を大事にして生きる「個別化の時代」に移行している今こそ、ダークホースたちが、これからの時代の「成功」を体現するのだとと筆者は語る。

本の中では、従来の成功プロセス(いい大学に入り、誰もが羨む企業で働き成果を出す)とは異なったやり方で自分の道を固めていく人たちのやり方を多数記しているが、どの人も自分に対する理解の解像度が驚くほど高い。
たとえば「花が好き」という興味関心ひとつとっても、その生態系に惹かれるのか、花に関わるビジネスへの関心が高いのか、花の美しさを探求していきたいのか、など、方向性は多岐に渡る。
そうしたピンときたものをぼんやりとさせたままにせず、自分の心が動くものが何なのか、ひたすらに探り、言語化を進めていく。
だからこそ、無数の選択肢から自分に合ったものを掴むことができるのだろう。
けれどこうした自己理解のプロセスの完遂は、決して簡単なものではない。むしろ面倒くさいと放り出してしまう人のほうが多いんじゃないだろうか。「この道に進めばそれなりに安牌」という選択肢は、考える必要がないという点で、魅力的に映る人もいるだろう。


またダークホースたちは、自分自身の強みが、世の中に求められるどんなスキルにつながるのか、試行錯誤し続けることを厭わない。
人間は誰一人同じ人はいないし、自分の強みもまた、隣の誰かとは似て非なるものだ。しかしながら社会や会社組織に定義されたスキルは、ひとりひとりの個性への配慮は残念ながら行ってくれない。自分の個性を活かせるスキルはいったいどういうものなのか。広い世界からこれを見つけるのもまた、骨の折れる道のりだ。
すでに体系化された勉強方法やマニュアルなどがある資格のほうが、なんとなく安心してスキルアップに励むことができる。ただしその先にあるものは「個性を失った自身」でしかないという。

星の数ほどの選択肢から、自分だけの成功を。
ワクワクするような言葉でもあり、同時に険しさを兼ね備えているとも感じた。

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