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詩  弟(冬のスケッチ)

陽射しの明るさより、
その影の濃さに気を取られている。

ボクが消してしまったキミの未来を
償う術もなく生きて
わけのわからない文字を
連ねるのみだ。
それは手紙か?
罪滅ぼしの。

勝手に名付けたキミの名を呼ぶ。

「祈り」と名づけた静止画/記憶がある。
仏壇に祈る母
母を見るボク。

白い廊下に光が射しているよ。
キミの色だ。
色は光だ。
でも、有り体に言って、
僕にとって、
それはまるで記憶の美化ではないか。
いや、捏造だ。

美しさからはほど遠い、
色を重ねる試み。
秘密の、キミの名を呼ぶ。


言うまでもなく、
事実は小説より辻褄が合わないのだし、
あるか無しかの微風にさえ、
共振れする記憶の奥行きがある。

安心しろ。
足下の花は踏めない。
花は風を誘う。
花の揺らぎが風になる。

キミの名を呼ぶ。
声に出して、呼ぶ。
つぶやく。
それは存在の強度を画する。

日没がくる。
事実などなかったのだと、
言い募る甘美な誘惑の夜がくる。

でも、

ほら、

そうだ、

今夜も、
あの、

あの木影にいるのは、誰。

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