宇多田ヒカル「BAD モード」と不敵な笑み
ジャケット写真はラフなスウェットの上下。端には子どもの姿も映る。家庭的でありながら、どこか不穏さを抱えたその表情。そしてタイトルは「BADモード」一筋縄ではいかない佇まいで、彼女は現れた。
ここ数年の彼女は、一定のクオリティを保ちながらどこか焦点の合わない感じもあった。前々作の「FANTOME」が母・藤圭子の生と死に触発されるように自らの生と死を見つめ、それが大きな喪失を経験した社会や時代とシンクロするという見事な構造を持っていたからかもしれない。多くの人の悲しみと共振する