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イレジスタブル・フォーセズ/ジャック・ディジョネッツ・スペシャル・エディション

 今回はドラマー、ジャック・ディジョネットの1987年録音リーダー作『イレジスタブル・フォーセズ』を取り上げましょう。

録音:1987年1月
スタジオ:アストリア・レコーディング・スタジオ、ニューヨーク
エンジニア:トム・マーク
アシスタント・エンジニア:ジル・ウォーレン
プロデューサー:ジャック・ディジョネット
エグゼクティヴ・プロデューサー:リッキー・シュルツ
レーベル:MCA/Impulse!

(ds, p, key)ジャック・ディジョネット  (ts, fl, cla)ゲイリー・トーマス  (as, ss)グレッグ・オズビー  (el-b, b)ロニー・プラキシコ  (el-g)ミック・グッドリック  (perc, vo)ナナ・ヴァスコンセロス

(1)イントロダクション  (2)イレジスタブル・フォーセズ  (3)プレルーディオ・プラ・ナナ  (4)ハービーズ・ハンド・コックト  (5)オズテティックス  (6)47th グルーヴ  (7)シルヴァー・ホロウ  (8)インタールード/ポンタ・ジ・アレイア  (9)ミルトン  (10)サード・ワールド・アンセム  (11)コンクルージョン

ジャック・ディジョネッツ・スペシャル・エディション
/イレジスタブル・フォース

 多作家ジャック・ディジョネット、自身のグループ、スペシャル・エディションを率いての作品です。

 ジャズ・ドラム界を牽引する最重要パーソンであるディジョネット、60年代にジャッキー・マクリーン、チャールス・ロイド、マイルス・ディヴィス、キース・ジャレットらとのコラボレーションで音楽性を磨きます。
 ドラマーとしての実力は申し分なく、ジャズの伝統に深く根差したアプローチを基本とし、デビュー当時から殆ど自己のスタイルを築いていました。その後も表現方法の模索、試行錯誤を重ねて独創的なドラミング・スタイルにまで至り、未だ進化中にして他のプレーヤーの追従を許しません。

 一聴猛烈な音の洪水が押し寄せるかの彼のドラミング・スタイル、こちらを自分なりに解析して見ました。
 エルヴィン・ジョーンズのダイナミクスさと重厚さ、ビートの粘り具合、トニー・ウィリアムスのシャープさ、敏捷性、巧みなプレイ・レスポンスを兼ね備え、1拍の強力な長さとタイムの安定感、反するかのスピード感、カラーリングの多彩さ、そして音量の大小コントロールの妙を併せ持ちます。
まさに両者のいいとこ取り、幾多のジャズドラマーの願望、理想を見事に叶えたプレイスタイルと言えるでしょう。
 共演者とのインタープレイでは、ソロイストのコンセプトに対し考え得る最良のレスポンスを施しながら、次なるステップへの踏み台を構築します。瞬間瞬間の反応と同時に演奏の展開を虎視眈々と見据えながら、ソロイストの到達すべきポイントまで確実に寄り添います。
 ディジョネット・マジックと銘打ちたい程に、彼だけが成し得るハイレヴェルにしてクリエイティヴなサポートを展開します。
 一方キース・ジャレット・トリオでの一転してシンバル・レガートのみでの対応、ジャズの真善美を有するキースの打鍵を引き立てるべくの、「何もしなさ加減」には空いた口が塞がりません。

エルヴィン・ジョーンズ
トニー・ウィリアムス

 またコンポーザー、アレンジャー、ピアニスト、バンドリーダーとしてマルチな活動を行い、アーティストとしての位置を確立します。
 出身地シカゴの前衛派ミュージシャンと積極的に演奏を重ね、彼らを中核としたAACM(創造的ミュージシャンの進歩のための協会)にも参加し、プレーヤーとしてだけではなく、オーガナイザーとしての役割をこなし続けています。

 スペシャル・エディションの名を冠したディジョネットの作品は現在まで8作リリースされています。
 79年録音の記念すべき第1作目、その名も『スペシャル・エディション』は本作『イレジスタブル・フォーセズ』と同様にテナー、アルトのツー・サックス(デヴィッド・マレイ、アーサー・ブライス)をフロントに、ベーシスト、ピーター・ウォーレンを擁した、以降も基本となるコードレス・カルテット編成です。

ジャック・ディジョネット
/スペシャル・エディション

 こちらの作品も私がnoteに記事を書いています。どうぞご覧ください。

 第1作目とはテナーがチコ・フリーマンに変わった以外、同じメンバーで翌80年の第2作目ライヴ録音『フェイマス・ボールルーム、ボルチモア'80』

フェイマス・ボールルーム、ボルチモア'80

 80年録音第3作目『ティン・キャン・アレー』ではアーサー・ブライスがジョン・パーセルに変わります。ディジョネットのピアノプレイも冴えています。

ティン・キャン・アレー

  第4作目82年録音『インフレーション・ブルース』は前作と同一のフロントにトランペッター、バイキダ・キャロルが加わり、ベーシストがルーファス・リードに変わります。3管編成によるハーモニーの充実ぶり、ディジョネットのヴォーカルに対する本気度も窺える作品です。

インフレーション・ブルース

 84年録音第5作目『アルバム・アルバム』はルーファス・リードが留任し、パーセル、マレーが返り咲きます。ここにチューバとバリトンサックスと言う、異種最低音域楽器を巧みにこなす名手ハワード・ジョンソンが加わり、ディジョネットの名曲アーマッド・ザ・テリブルや、フロント3管がセロニアス・モンクのモンクス・ムードでこの上なく美しいアンサンブルを聴かせます。
 他にも本作『イレジスタブル・フォーセズ』で演奏されたサード・ワールド・アンセムの初演が収められ、第1作目収録のズート・スイート再演も行われますが、いずれに於いても充実したサウンドを確認できます。
 スペシャル・エディション・ミュージックと名付けたい、充実の一枚です。

アルバム・アルバム

 第6作目以降はECMからMCA/Impulse!にレーベル移籍し、本作『イレジスタブル・フォーセズ』に至ります。
その後もスペシャル・エディションの活動は継続し、『イレジスタブル〜』と同一メンバーで88年2, 3月録音『オーディオ・ヴィジュアル・スケイプス』、91年録音『アース・ウォーク』、94年録音『エキストラ・スペシャル・エディション』まで続きます。
 元来スペシャル・エディションの意味が「特別版」です。”エキストラ”〜特別の特別版という事で、バンドの最終章を意味しているのかも知れません。

 ジャズ界を見渡してみても、ディジョネットほど端正で音楽的に豊潤なプレイ、サウンドを繰り出すドラマー、音楽家は存在しません。
正確さと言う概念を通り越したリズムの迫力、スイング感、聴く者の背筋を正す程のグルーヴには常に圧倒されます。
 そんな彼がフリー・フォームのフィールドで活躍する管楽器奏者達をフロントに据え、リズムが決して無くならずインテンポにて(フリー・フォーム表現の最重要点と言えます。オーネット・コールマンの代表作『フリー・ジャズ』が好例です)、加えてコード楽器という制約を排除した自由な音場で個性を発揮出来る彼らです、リズムのぶれを補正しながら(コンテンポラリー・ジャズ奏者とは異なり、リズムのルーズさは彼らにつきものです)、ディジョネットの繰り出す壮大なリズム塊にプッシュされ、揉まれ、ある種翻弄されながら、恰もあたかも嵐の大海原で踠きもがきつつ熾烈な演奏を引き出される様相を呈示するのが、スペシャル・エディションの特徴と捉えています。
 敢えてフリー・スタイルのサックス奏者を迎え入れたのは、ディジョネット自身のプレイのマシン・クラスとまで言えるタイトさと同時に、あらゆる音楽的トラブルやアクシデントに瞬時に対応出来る包容力ゆえ、フリー・スタイル奏者を擁しても、寧ろ発生するハプニングをプラスの音楽表現に変換出来ると判断したからでしょう。彼の尋常ならぬミュージカル・アビリティを感じます。

ジャック・ディジョネット

 それでは『イレジスタブル・フォーセズ』について触れていく事にしましょう。
メンバーはECM時代と一新されます。

 リーダー、ジャック・ディジョネット がドラムス、ピアノ、キーボードを担当、 テナー、フルート、クラリネットにゲイリー・トーマス、アルト、ソプラノ・サックスがグレッグ・オズビー、エレクトリック・ベース、コントラバスにロニー・プラキシコ、ギターがミック・グッドリック、ゲスト・パーカッション、ヴォーカルにナナ・ヴァスコンセロス

 それまでのバンド形態と大きく異なるのがギタリストの登用です。コード楽器の参加としてはディジョネットがドラムスを叩かず、若しくはオーヴァー・ダビングでピアノ、キーボードを演奏しました。ギターのバッキングが加わるのは大きな変化です。
 楽曲によってはコード感の常態化に繋がりますが、スペシャル・エディションの特徴でもあるフリー・フォームに至らんとするバンド・サウンドを、ある種引き締める意味合いもあるでしょうし、結果通常のバンド形態に陥る危険性もあります。
 しかし本作のサウンド志向として、従来のコンセプトによるナンバーを取り上げつつ、それまでのスペシャル・エディションとは異なる、タイトなアンサンブルを中心とする楽曲がセレクトされています。
グッドリックのプレイは堅実にして決して出しゃ張る事なく、そしてバンドサウンドを活性化させています。

ミック・グッドリック

 1曲目イントロダクション、作品冒頭を飾る賑々しいパーカッション隊による演奏、掛け声はアフリカ系の言語由来でしょうか、フェードイン、フェードアウトによる短いテイクですが、アルバムの楽しさ、リズミックな醍醐味をプレヴューするが如しです。

 2曲目表題曲イレジスタブル・フォーセズ、ユニークな構成のナンバーはディジョネット・コンポーズの新機軸です。
 各楽器は異なるモチーフによるパターンを演奏し複雑に合わさり、緻密さと重厚さを感じさせます。その後サックス2管によるメロディ、ギターのフィルインが活躍するセクションを抜け、再び主題部に入ります。
 ソロの先発はトーマス、テナーのユニークな音色のプレイは一聴彼と判断させます。激しさと無機質、危ない色香を感じる特徴的なライン、彼の吹く音形を真正面から捉えるのと、真横から判断するのでは明らかな表情の異なりを覚え、まるでキュービズムの抽象画を鑑賞しているかの気持ちになります。

 プラキシコのエレクトリック・ベースが全編で活躍します。ディジョネットとのコンビネーションも申し分なく、タイトなファンクのリズムとスポンテニアスなグルーヴは、これまでのスペシャル・エディションのプレイと大きな違いを際立たせます。

 続いてグッドリックのソロへ、達者なピッキングとロジカルでリズミックなアプローチからは、ボストンのバークリー音楽院で長年教鞭を取り、綺羅星の如き門下生たち、ジョン・スコフィールド、マイク・スターン、ビル・フリゼール、ラーゲ・ルンド、ジュリアン・レイジらの輩出を納得出来ます。

 78年11月録音グッドリックECM・レーベルからのリーダー作『イン・パッシング』、ディジョネット、エディ・ゴメス、バリトンとソプラノ・サックスの鬼才ジョン・サーマンを迎え、ユニークなオリジナルをプレイしています。

イン・パッシング/ミック・グッドリック

 ギターソロのディミニュエンドに伴い雰囲気が一新し、主題テーマが現れますがギタープレイは継続します。
 明るさと何処か剽軽ひょうきんさを持つフロントのテーマが現れますが、超絶技巧と複雑なラインの見事な合わさり具合から、ウエザー・リポートのサウンドを感じます。
ベースがフレットレスではない点からジャコ・パストリアス以前のアルフォンソ・ジョンソン在団時、若しくはジャコ退団後ヴィクター・ベイリー時の演奏をイメージしました。

 3曲目プレルーディオ・プラ・ナナ、リズミックなハミングからシンバル・レガートが始まり、導かれるようにベース、ギター、キーボードが加わります。こちらも各楽器が異なるリズムを奏で、しかも一筋縄では行かない変拍子が合わさったテーマ奏、トーマスのフルートが主体となったメロディはエキゾチックさを聴かせます。
 ソロはメロディに引き続き短くトーマス、グッドリック、再びフルートが登場しラストテーマへ、エンディングは冒頭と同じくシンバルとハミングに一任され、カットアウトにてFineです。

 4曲目ハービーズ・ハンド・コックト、これまた大変ユニークなコンセプトのナンバー、ディジョネットの迸るほとばしるコンポーズ・アイデアに最敬礼です。
 様々なモチーフが内包され渾然一体となりながら、一つの具体的なストリームとなり、展開して行きます。イントロではナナが鳥の鳴き声のような音色を用い、カラーリングを行います。
 ザ・ビートルズ、ジョン・レノンのナンバー、『リボルバー』収録トゥモロー・ネヴァー・ノウズを連想するのは私だけでしょうか。

 サックス二人の比較的低めの音域でのメロディ、加えてハーモニーでの演奏が始まり、グッドリックのソロに移ります。
 一貫したバックのサウンドは、どのようなアプローチのインプロヴィゼーションも受け入れるキャパシティを持ち合わせ、オズビーのフリー色が強いアグレッシヴなソロをいとも容易く正当化させます。
 ラストテーマもホーンズは淡々とプレイ、矢張りナナのプレイが効果的にサウンドし、Fineを迎えます。

 5曲目オズテティックスはオズビーのナンバー、ここでのサウンドはいかにも従来のスペシャル・エディションを聴かせます。
 ソロはトーマスから、ディジョネットは水を得た魚のように攻め捲ります。サポートするプラキシコのラインが見事に映えます。
 ディジョネットの攻勢が先か、トーマスのテンションの高さ故か、互いに組んず解れつのソロ・トレードを繰り返しながら次第に高みに上ります。
それにしてもディジョネットの寄り添いつつ、確実に煽りながらソロイストを鼓舞するアプローチに改めて納得してしまいます。
 続いて作曲者のソロへ、ギターの起爆剤的バッキングが功を奏したのも一因です、グッドリック、ディジョネット両者の炸裂、猛打の後、次第にテンポが緩やかになります。
 ナナとグッドリックの二人してまるで遊んでいるかのカラーリング、そのまま必然性を持たせながらフリーフォームに突入しドラムソロへ。

 常にフレッシュなアプローチを模索し、それを確実に実現させるディジョネット、ここでも”おきまり”のリックに頼らない、天から降ってくるイマジネーションを大切にしながら自然体でソロを繰り広げます。ラストに歌舞伎の見栄の如きブレークを遂げ、ラストテーマに繋げます。

 6曲目47th グルーヴ、今回の参加メンバーが持ち合わせる個性、技、色合いを最大限にブレンドした感があるナンバーです。
冒頭からエネルギー放出全開、ディジョネットもここではとことん暴れまくるぞと宣言したかの、ドラミングを聴かせます。
 ナナが繰り出す効果抜群のヴォイス、フロント二人のバトルソロに続きテーマ開始します。ファンク魂全開です。

 ギター、パーカッションを含めたフロント陣によるコレクティヴ・インプロヴィゼーション、続いてパターンの上でドラムソロが行われた後、ナナのパーカッションにスポットライトが当たり、ベースのスラップに支えられたメロウなメロディを持つテーマ、様々なセクションが目まぐるしく現れます。
それらが繰り返し演奏されますが次第にFade outを迎えます。まだまだ演奏は続いていたに違いありません。演奏の止め所に苦慮した事と察します。

 7曲目シルヴァー・ホロウはディジョネットの78年6月リーダー作『ニュー・ディレクションズ』収録のナンバー、コード進行の妙と美しいメロディの配分が印象的です。

ジャック・ディジョネット/ニュー・ディレクションズ

 初演ではディジョネットの弾くピアノと、トランペット奏者レスター・ボウイによるメロディ・デュオが印象的でしたが、本作ではシンセサイザーのパターンがシークエンサーの如く基本となり、フルートを中心としたソプラノとのメロディ奏が行われます。
 元来ムーディな楽曲ですが、ここではまた違ったエキゾチックな魅力を引き出す事に成功しています。
 ソロはトーマスのフルートから始まり、オズビーのソプラノに続きます。
両者の演奏は歴代のスペシャル・エディションのフロントと同様にフリージャズ色を基本に持ちますが、タイム、リズム感、ソロのアプローチにはコンテンポラリー奏者系のセンス、安定感を確認出来ます。

 リズムはナナの演奏するパーカッションにキープさせ、アクティヴさはプラキシコのラインに任せたかのよう、そしてディジョネットのピアノソロに続きます。ワンクッション置いてラストテーマへ、全体を通して全員淡々としたプレイに終始しますが曲想に沿った形となり、アルバムのポイント、聴かせどころとなったと思います。

 8曲目インタールード/ポンタ・ジ・アレイアはミルトン・ナシメントの名曲、お馴染みウェイン・ショーター74年9月録音『ネイティヴ・ダンサー』収録のナンバー。
 ディジョネットの弾くピアノとナナのヴォイスによる二重奏で演奏され、次曲に続きます。

ネイティヴ・ダンサー/ウェイン・ショーター

 9曲目ミルトンは4分の7拍子が基本となったイントロから始まります。
フルートとソプラノによる、独特なサウンドを有するメロディラインに魅力を感じます。
ソプラノ、フルートソロと続きますが、グッドリックのバッキング、ナナが繰り出すカラーリングが効果的、とりわけオズビーの変態超絶系のアプローチが光ります。
 プラキシコのソロへ。唐突ですが私は40年近く前に彼と偶然新宿の路上で会い、話をした事があります。
ニコニコした好青年でした。周囲とのブレンド感を大切にしている様に感じ、ここでもその事が生かされています。

 フロント・メロディのバックで叩くディジョネットのフィルインは楽曲のテイストに合致し、ナナのヴォイスと共に曲をミステリアス、且つ華やかなものにしています。
 エンディングはディジョネットがリードし、リタルダンドで FIneです。

 10曲目サード・ワールド・アンセムは本作白眉のナンバー、こちらもスペシャル・エディションならではのプレイです。
 猛烈なドラムの連打、幾何学的でリズミックなテーマがアップテンポで開始されます。スペーシーなテーマメロディのはディジョネットがフィルインを繰り出すために存在するかの様、メロディとドラムプレイがコール・アンド・レスポンスの関係にあります。
 いくつかのモチーフを組み合わせたテーマですが、安堵感を提供するかのパートが魅力的に響き、ナナのパーカションが場を華やかにデコレーションします。

 ソロはスイングビートで行われます。いきなりのオズビーとトーマスのバトルは演奏の活性化に貢献しています。
ディジョネットはインスパイアされ、聴いた事もないアグレッシヴなフィルインを猛打、激しくもクリエイティヴに盛り上がります。
 とは言えテンポが若干速くなり、すわ崩壊かと思わす瞬間が何度かありました。プラキシコのウォーキングベースはある程度の速さになるとグルーヴが重くなる傾向があります。ディジョネットが懸命にリードしているので音楽が存続しますが、凡百のドラマーでは難しいと思います。

 サックス二人によるアンサンブルが入り、場が整い始めます。ここからまさかのベースソロに突入、ディジョネットがサポートし続け、再びホーンズのリフがプレイされ、今度はこの期に及んでギターソロが行われます。プレイ上、一杯一杯の様相を感じましたが彼らにはまだ音楽的余裕があるのでしょう。そしてとうとうラストテーマに雪崩れ込み、カットアウトでFineとなります。

 11曲目コンクルージョンは1曲目イントロダクションの演奏よりも密度濃く、活気がある様に聴こえます。これだけの演奏を行なった結びとして存在するのでしょう。


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