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厚労省老健事業「訪問看護の情報標準化のための訪問看護記録書Ⅱの記録・共有のあり方に関する調査研究」 ワーキンググループに参加しての所感

 note2回目?の投稿なので、まずは所感を書き記すことにしてみた。私が今回のワーキンググループ参加にあたって年末年始にも関わらず協力してくださった方々にこのレポートが届いてくれたらと思う。

 今回、こういったワーキンググループに他のものを含め2回目の参加をさせて頂いた。12月下旬に連絡が届き、1月の上旬に3回も集まって討論した。(キツキツなスケジュール)

 メンバーは、「東京・神奈川・千葉・大阪・兵庫・愛知・奈良・香川・島根・富山」からの参加だった。

 場所は、東京大学で開催されたため、全て参加することができず、遠隔参加となった(Zoomを利用)。音声が聞き取りにくい時や、知らずにミュートになっていたりと使い慣れない部分があったが、回数を重ねるうちに改善していった。同時にチャットや自分のPC画面を全員で共有し、資料を見ながら、注目してもらいたい箇所はマウスのカーソルなどで強調することも容易だった。

 前置きはこれくらいにして、私自身が半構造化インタビュー及びフォーカスグループインタビューをさせて頂いた方々に向けて、話し合っていたことや学んだことを還元していきたい。

 私がインタビューさせていただいた方々は、「東京・神奈川・埼玉・千葉・栃木・大阪・岐阜・長崎・富山」であった。

議論の全体の中身はこんな感じだった。 
「訪問看護記録Ⅱの全国統一化」→「提出をルール化」→「データ収集」→「分析」→「社会に還元」

重要な論点となっていたのは、
「ケアの内容・成果の見える化」
「職種を超えた情報共有による連携推進」

3回開催された内訳として、
①記録内容の標準化に関する検討
②記録方法の標準化に関する検討
③標準化手段の実装に関する検討

 結果からいうと、介入項目(ケアの記載内容の標準化)を決めることになった。介入項目の内容は、long term careが参考となりそうだった。ドメイン8項目、14項目、予防的ケア48項目に分かれている。訪問看護は、利用者さんをアセスメントし、注目する点(問題点?)を抽出し、それに対する計画を立て、介入していくと思われるが、今回は介入項目に着目されていた。
※ 利用者さんの生活に対して、問題点という表現は適切ではないと考え、注目する点としている。もともと、POSや看護問題などと教育されてきた背景があり、そのような表現が多くなるのは必然だと思う。

 様式自体は、紙ベースの事業所がまだまだ多いため、今回は項目だけに決まりそうだった。しかし、話し合いの中では、アウトカムベースの様式になっていく方向になりそうだった。

 アウトカムが決まらないと、介入項目も決まらないという話が進み、そもそも訪問看護によるアウトカムっていうものが現しにくいという議論になっていった。しかしながら、挙がっていたアウトカムは、住み慣れた地域で長く生活を続けられることであり、言い換えると「重症化の予防」や「安定している」、「再入院率」「救急搬送数」など。訪問看護師のコンピテンシーとしては この方がどのようになるか「見通す力」が必要で、具体的にはそのひとやその家族、その地域、フォーマルやインフォーマルなサービスを含めアセスメントすること、紙・電話・FAX・ICTを利活用して情報を共有し、多職種と協働してサービスの断片化を防ぎアウトカムを出していく。また、訪問看護ステーション単位でデータ収集しても意味はなく、個票データが収集されないと価値がない。記録内容も自然言語(日常的に使っている言葉)では量的に分析できない。さらに、日常業務の記録をエビデンス集積のための2次利用は容易ではない。

 ふむふむ、ここで病院業務の「看護必要度」や「DPCデータ」、「退院支援スクリーニング」、「転倒転落アセスメントシート」、「褥瘡リスクアセスメント」などの病院では増える一方の入力業務(データ入力)とやっと繋がった。正直、在宅領域も病院と同じようにそういった雑多な業務が増えないことを切に思った。業務を一つ増やしたら、一つ減らしてほしいくらいに思っている。 S情報(主観的情報)は分析には不向きでも、そのひとらしく生きる目標やACP、ナラティブといった情報を集めるには必要だし、一番重要だと思う。

 ここからは、ワーキンググループ終了後から、調べたことを記述しようと思う。

 訪問看護記録Ⅱの全国統一を図って、データ収集、データベース構築という流れになりそうということで、日本では現在どのように提言されているのか少し調べてみた。

平成28年、「保健医療分野におけるICT活用推進懇談会提言資料」というものが出ていた。
 PeOPLeという「個人を中心に統合されたデータベース」の構築を図っている。データの内容は、これまで受診したデータ、健康診断のデータ、介護施設におけるデータなどである。

 この構想の参考となっているのは、エストニア(バルト三国)である。
エストニアは、「電子立国」といわれ、法的にもセキュリティ体制も確立しているようだ。注目し、わかりやすいスライドがあったため添付しようと思う。電子カルテが9割以上普及されているのに驚き!
日本の場合、マイナンバーカードがやはりキーになってくるようだ。

 現在、PeOPLeは2020年に稼働を目標とされている。実装は、「平成生28年度 老人保健健康増進等補助金 ICTを活用した地域包括ケアシステムの構築に関する調査研究事業報告書」福岡市で行われているようだ。ここの動向に今後注目していきたいと思う。

 私が経験した職場や地域での現状から、BYODに関する情報が浸透が不十分に感じた。BYOD(Bring Your Own Device)とは、個人所有の端末を使うことである。情報漏洩の観点から、H16年に日本医師会が「個人所有の電子端末使用禁止」、「事前に専用の設定を施した端末しかICTにログインできないようにすること」を強調している。BYODは地域や事業所単位のルールで運用されているのを散見する。事業所が専用端末を貸し出すか、注意事項と同意書にサインして使用するかに分かれているようだ。
 平成20年に総務省から「ASP・SaaSにおける情報セキュリティ対策ガイドライン」が定められている。そこにはセキュリティの高さで分類される表が記載されており、医療・介護・福祉業サービスの情報は一番高いランクに位置している。同ランクには、人事給与・勤怠管理サービスや金融業サービスの情報と同等とされており、なるほどな!と思った。
 ちなみに、ASP(Application Service Provider)及び SaaS(Software as a Service)は、ともにネットワークを通じてアプリケーション・サービスを提供するものであり、基本的なビジネスモデルに大きな差はないものと記されている。
 法的には、2017年5月から施行された「改正個人情報保護法」が関わり、対象が5000件以下の個人情報を取り扱う事業所も加わったことが大きな変更点のようだ。開設したばかりで利用者が少ない訪問看護ステーションや診療所なども対象になる。違反すると、1年以下の懲役または50万円以下の罰金が科せられるようだ。
 PeOPLeが普及してほしいが、セキュリティや秩序が確立し、医療介護従事者が本来の役割に注力できる環境が整ってほしいと思った。

調べると現状や課題が多すぎるので、今回はこの辺でやめにして、また、引き続き書いていこうと思う。

#レポート
#訪問看護
#医療介護連携

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