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能「皇帝」に思うこと その3

その後の竜成の会

第三回目には「家族」をテーマに「石橋 狻猊之式」を親子三人で勤めた。能面は姉が打った。ロビーには父母のルーツも紹介した。

第四回目は能「谷行」を勤めた。葛城山にいらっしゃる五鬼の子孫、西野初雄さんにお越し頂き、ご縁を繋いで頂いた浅村朋伸氏と三人で対談をした。「谷行」の後シテ『伎楽鬼神(ぎがくきじん・一般には前鬼と言われる役行者の弟子)』は西野さんの先祖にあたる。そう言えば初めて西野さんに会いに葛城山に行った日が偶然にも役行者の命日だった。山を登りながら浅村氏と盛り上がったのを覚えている。

そして節目の五回目は大曲「道成寺」を勤めた。初めてチケットが完売し、補助席も出た。(下記リンク:竜成の会・過去の公演)

そして第六回目から「関蝉丸神社勧進能」として「竹生島 女体」・「蝉丸」と関蝉丸神社および琵琶に関する曲を続けてきた。第五回目と第六回目の間には一年のブランクがある。その間に父が他界し、世界は新型コロナの影響を強く受けた。


能「皇帝」

竜成の会の第二形態ともいえる関蝉丸神社勧進能の中で今年は「皇帝」。蝉丸とは関わりのない中国の話だ。実はこれは「自分がやってみたい曲」という理由で選曲した。2019年、関蝉丸神社勧進能の構想段階で第十回目まで曲目を定めているので、コロナ禍より前に偶然にも感染症に立ち向かう演目を選んでいたことになる。

第二回竜成の会で能「鍾馗」を勤めた後で、どうやらもう一曲、鍾馗さんが登場する演目がある事を知った。そしてお弟子さんとのお稽古の中で取り上げてその内容を研究した。すると、鍾馗は後半・一人で登場するのに対し、皇帝は後半に病鬼(びょうき)と対決するシーンがあった。これは面白いじゃないか、となった。(下記リンク:能を嗜む・お稽古教室の様子)

谷崎潤一郎の「陰翳礼讃」

急に話が変わってしまうが、谷崎潤一郎という小説家をご存知だろうか。実はあまりこの方の小説を読んだことはない。けれど、「日本文化といえば『陰翳礼讃(いんえいらいさん)』だよね!」と海外のアーティストによく言われた。

この随筆は日本が西洋化していく中で、光と闇について谷崎が感じていることをかなりマニアックに書いている。およそ90年前に出版されているが、当時の日本の変容の様子は今では当たり前のものばかりである。字を読むのが苦手な方はオーディオブックで耳から取り入れては如何だろうか。文字の多さに恐れおののかずに済む。かく言う私もそういう取り入れ方をした。

そして東京公演の時に山手線に乗りながら聴き進めていると、思いもよらないキーワードが耳に飛び込んで来た。それは「金剛巌氏」と「皇帝」だった。

つづく

第八回竜成の会「皇帝」ー流行病と蝋燭ー

令和5年5月28日(日)14時開演

絶賛発売中!
チケットはこちら
https://teket.jp/1133/20033

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