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能「皇帝」に思うこと その5

五番立てとは

能楽の演目には「五番立(ごばんだて)」というカテゴリーが存在する。次に挙げたのが、その五番立のカテゴリーだ。五番の能を立て続けに行う場合や、二曲以上続ける場合も、この五番立の順序に合わせて行うことが一般的である。

  • 翁(番外)

  • 初番目 脇能物

  • 二番目 修羅物

  • 三番目 鬘 物

  • 四番目 雑 物(狂女物・唐物・遊狂物・現在物・執心怨霊物・準脇能物)

  • 五番目 切能物

翁(おきな)
翁という芸能は能楽の成立よりも古くから伝わるもので、これは一日の公演の中で必ず一番最初になる儀式的なものである。

脇能物(わきのうもの)
その翁に付けてする脇能は神体が現れる祝言の演目になる。祝言とは、平和な御代を喜んだり、神がこの世界を守護している様をあらわす内容で、人間のドラマではなく、観る人に喜びを与える内容になる。

修羅物(しゅらもの)
修羅物は武将の幽霊が登場する。修羅物には「勝ち修羅」と「負け修羅」があって歴史上の物語や平家物語に登場する武者の幽霊が主人公で、生前にあった忘れがたい事を僧の前で物語り、弔いを受ける。人間の生き様、死に様を見る演目である。

鬘物(かずらもの)
鬘物は優美な男女(伊勢物語・源氏物語の登場人物や貴人・遊女・天女など)または草木の精霊が人間の姿となって現れる。美しい女性やハンサムな男性、または自然の有様の美しさが人の姿となって現れる。主人公は女性の割合が多い。

雑物(ざつもの)
雑物は「様々なカテゴリー」という意味合いで、変化に富み、言うならば味付けの濃いものである。五番能の場合、そろそろ曲調に変化が欲しいタイミングで、その日に相応しいドラマチックな一曲を選んで見せるのである。

切能物(きりのうもの)
その日の最後の演目として、龍神や鬼神が現れアクロバティックな舞を見せたり、アップテンポな舞を舞う貴人などが登場する。ちなみに「皇帝」はこのカテゴリーに属している。

野外の能の時間経過と照明効果

以前、書物で読んだことがあるが、私の知る一日における最高演能回数は、御所で催された能十一番である。夜明けから丑三つまで続いた能は、おそらく今でいう野外音楽フェスの様な形式であったと思われる。今の様に劇場の中で緊張感と集中力で見せるものとは少し異なった物であったに違いない。

昔の方が上演時間が短く、もっとあっさりしたものだった事から、今日の様なじっくりとした演じ方は室内に入った事と何かしらの関係があるように思われる。

野外では朝方は清々しく、昼間は明るく、夕方は赤い陽が差し、夜には篝火がたかれる。それぞれ異なった照明効果があり、舞台を照らす明かりの位置も時間経過と共に移り変わるのである。

野外で行われた舞台の中でも2017年9月に京都の伏見稲荷大社で催された「夕暮能」は今でも忘れる事ができない。

つづく

第八回竜成の会「皇帝」ー流行病と蝋燭ー

令和5年5月28日(日)14時開演

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