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私の研究の原風景

 昨日,SFCメディアセンターライティング&リサーチコンサルタント(WRC)のトークショーでお話しする機会をいただきました.卒業プロジェクト(SFCでは学部の卒業研究を卒業プロジェクトと言います)に取り組むSFCの学生向けに研究の進め方,特にどうやって研究テーマを決めるのかといった部分を,WRCメンバーの経験も交えながらお話ししました.

 冒頭で,それぞれのWRCメンバーがどんなモチベーションで今の研究分野,研究テーマに至ったのかを話す中で,多くのWRCメンバーが各自の強烈な経験によって今の研究をするに至ったという話がありました.確かに強烈とまではいかなくても,研究をするにあたっては各自の経験が研究分野・テーマを決める上で大きな要素になるよなー,と他のWRCメンバーの話を聞きながら思いながらも,私はあまり強烈な経験によって今の研究分野・研究テーマに至ったという感覚がありませんでした.

 ヒトの動きを定量的に分析するというスポーツバイオメカニクスの分野に足を踏み入れたのは,物心ついた時から自然とスポーツのデータをまとめる習慣があり,それがもはや日常であったからです.なぜそんな子供だったのかはもはや覚えていませんが,好奇心が強かったのでしょう.経験という意味では,強いていえば,陸上競技を中高大学と続ける中で,陸上競技は物理法則で説明しやすく(と私は考えています),自分の競技がスポーツバイオメカニクスとの相性が良かったのだと思います.とはいえ,物心ついた時からスポーツに関わる仕事をするんだろうな,研究者になるんだろうな,と漠然と思っていて,その直感を信じて今に至っています.なので,他のWRCメンバーの素晴らしい経験談を聞きながら,ためになるような経験談がないことに申し訳なさを感じつつ,昨日のトークショーは終幕してしまいました.

 トークショーが終わってから,ぼんやりと自分が今の研究に至った原風景ってなんだろうと考えてみました.そうすると,記憶の奥底に眠っていた1つのレースが思い出されました.それも自分が走ったレースではありませんでした.2004年(おそらく)のインターハイの男子400m走決勝でした.記憶が確かなら夏の夕立の中でのレースで,当時高校2年生だった金丸祐三選手(その後日本選手権を11連覇した日本のロングスプリントの第一人者です)が優勝しました.当時私は小学5年生で,高校で陸上競技をしていた兄とテレビでそのレースを見ていたと思います.当時の自分にとって,初めて見た金丸選手は,かっこいいヒーローだったのでしょう.あのレースを見なければ,中学で陸上競技を始めていなかったと思いますし,高校で400mを専門にしようとは思わなかったはずです.思い返せば,あのレースが自分の人生を大きく方向付けたのだと思います.17年も前のレースですが,夕立の中で芝生席のバックスタンドを向こうに,ぐんぐん加速していく金丸選手が鮮明に思い出されます.17年前の暑い夏の日,自宅のリビングで兄と共にテレビにかじりついてみた1つのレースが,私が今の研究に至った原風景なんだと思います.

 他のWRCメンバーの経験談を聞きながら,自分の研究の原風景を思い起こすきっかけになり,今回のトークショーに参加できてありがたかったなと思います.他のWRCの皆さんの経験談はとても貴重で,これから研究を始める皆さんにとっては金言だと思います.SFC生に限らず,これから卒業研究に取り組む皆さんには,ぜひアーカイブでご覧いただきたいと思います.今回のトークショーは,WRCにとっては久しぶりのイベントでした.今後も継続してトークショーなどの企画を行いたいと考えています.

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