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見知らぬおばさまの言葉

 先日、長男5歳と二人でいる時間があって、彼がアイスクリームを食べたいというので、アイスクリームを食べに出かけた。と言いながら、私は本屋にも行きたかったので、本屋とアイスクリームがあるデパートに行った。最初に本屋に行った。自分だけ買うのも悪いから、一冊だけいいよと息子に言って。本屋の入口近くに、となりのトトロの特集コーナーがあった。映画のトトロはまだ観たことがないけど、トトロのタオルや人形(もらい物)が我が家にあり、トトロが身近な彼は、トトロが折れる折り紙を手に取る。というか、強い視線で、これが欲しいビームを送る。880円と折紙にしては、お高いけれど、とりあえずそれを買うことにした。そして私は、「令和元年の人生ゲーム」を購入。

 アイスクリームを食べにエレベーターに乗った。アイスクリーム、正確にはジェラートを食べた。小さなイートインスペースで、二人並んで食べていると、60代くらいの女性も一緒になった。「目が大きいね」と息子に話しかける。息子、無言。もじもじ。「人見知りなんです」と私。我が息子は家ではたくさんおしゃべりをして元気いっぱいなのだが、ひとたび、知らない人の前に出ると、話さない。幼稚園でも、最低限しか言葉を発しないので、私は大丈夫だろうかと気になっていた。かくいう私も子供の頃、同じようなもんだったとは思うが。今だって、それほど社交的ではない。それでも、親心というのか、ただの心配性か、この子は、小学生になった時、強い子のターゲットにされないだろうかと、悩んだりもした。

 隣にきた女性は、「まぁ男の子はね、そんなものよ」
「女の子はたくさんしゃべるけど」
「頭の作りが違うのよ。ほら大人になっても、地図が読めるとかあるでしょ」
「それに、たくさん喋れるからって、頭がいいとは限らないし。
話せないから頭が悪いってこともない。」
「話しすぎて余計なことを言ってしまう人もいるくらいだから、必要なことだけちゃんと言えればいいのよ」
というようなことを言ってくれた。個性ってことも言ってくれたんだったかな。

 そういえば、息子が通う幼稚園の参観に行ったら、クラスで歌を歌っていない子が3人くらいいた。みんながみんな大きな声で歌っているわけではなかった。元気な子もいれば、静かな子もいるし、立って歌うところで、座ったままの子もいた。そうだよな、みんな一緒だったら、気持ち悪いよね。いろんな人がいるのが良いのだ。それに余計なことを言って、人を傷つけるような人にはなってほしくないし。と思えた。

 少し会話をしたその優しそうな女の人が、ジェラートを食べ終え、じゃあまたねっと去っていった。息子に「あの人誰?」と聞かれたが、もちろん知らない。ただ、私の気持ちがすっと明るくなった。

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