【部活の思い出】イラストレーターですが、高校時代はソフトボール部員でした

両親が実家に残っていた私の物を持ってきた。最初に家を出たのが10年以上前で、それからまったく使っていなかった物たち。生活する上で、なくても困らないけど、なんとなく捨てにくいもの。

その中にグローブがあった。高校時代、大切に使っていたソフトボール用のグローブ。捨てられない、けれど、今は使わない。

私は、高校生の頃、ソフトボール部に所属していた。先輩や同期に「なんでソフトボール部に入ったの？」と聞かれたことがあったが、ぼんやりとごまかしていた。なんとなく恥ずかしかったから。実は、すごくソフトボールをやりたくて、ソフトボール部がある高校を選んだこと。私は、それまでソフトボールをやったことがなかったし、見た目的にもソフトボールをやる雰囲気に見えなかったかもしれない。

私には兄がいたので、小さい頃、カラーバットとカラーボールで野球っぽいことをしたり、兄の友達の影響でヤクルトを応援したりしていた。横から投げる高津が好きだった。中学生の頃は、KinKi Kidsとイチローが表裏一体になったポスターのイチロー側を部屋の壁に張っていた。
小学生の頃、たぶん夏休みに再放送のアニメ「タッチ」を見た。それで、甲子園、いいなぁと思った。男の子だったら、野球やってたなぁと。実際の甲子園では、横浜高校だった松坂が大活躍していた。そこで、小学生の私は中学生になったら、女子ができるソフトボール部に入ろうと思った。その頃、住んでいた地区の入学するであろう中学校には、ソフトボール部があった。
ところが、小学校卒業とともに引越し。その先の中学校には、ソフトボール部がなかったので、バドミントン部に入った。(小学生の時、バドミントンクラブに入っていたので) バドミントン部は、それはそれで楽しかったし、頑張っていたけど、やっぱりソフトボールをやってみたいという気持ちは消えておらず、高校はソフトボール部がある都立高校を選んだ。
ソフトボール未経験者なのに、こんな熱い思いがあったなんて、なんだか恥ずかしくて言えなかったのだ。

高校に入学して、席の前後のクラスメイトを誘い、ソフトボール部見学をした。2人も入ってもいいかなという雰囲気で一緒に来てくれたものの、見学中に先輩のデッドボールを見てか、サーっと引いてしまった。入部しなかった。見学中、すでに先輩達にまざって、体操をしている一年生がいた。いかにもスポーツウーマンという雰囲気。彼女は、中学からソフトボール部で、ピッチャーをやっていた人だった。
早速、私も入部すると、1年生はなんとその子と私の2人だけだった。先輩達はたくさんいたけど、なぜだか私の学年は、その後の入部者もなく2人だけ。とはいえ、何分、やってみたかった気持ちが強かったので、ただ練習できるだけで、私はすごく楽しかった。素振りも網打ちも、キャッチボールもフライやゴロを取ることも。家に帰ってからも素振りをしていたほどだ。先輩達も2人しか入らなかったせいか、丁寧に楽しく教えてくれた。ちょうど卒業した世代の先輩の時は、強いチームだったらしく、その代の先輩OGが教えてに来てくれたりもした。おかげでど素人だった私もそれなりにバットを振れるようになった。

そうした楽しい部活ライフも先輩達が卒業すると、私の学年は2人だけ。下の学年もなぜか1人しか入らず。今、思うと下の学年の彼女もなんでソフトボール部に入ったのだろうか。中学時代は確かバスケをやっていたと言っていたような。可愛らしい見た目の後輩だった。たった3人で、校庭の半分を使って練習したこともあった。気まずかった。野球部、サッカー部、ソフト部で曜日交代で割り振って、校庭の使い方を決めていた。野球部の人達は親切だったが、サッカー部からはグイグイボールが飛んできたりした。
肩身が狭い。とはいえ、それでもなお、私は練習できるだけで、楽しかった。同期のスポーツウーマンな彼女Rは、部員集めをしようと言った。私たちは、1年生の教室の後ろの黒板に、ソフトボール部員募集の告知を書きに行った。そうしたら、ほどなく3人の1年生が入部してくれた。これで計6人。そして、いつのまにかRがあちこちの部活からスカウトしてきて、9人になった。空いていたショートのポジションに横の動きが得意な卓球部の1年生。センターに陸上部で砲丸投げをやっていた同級生。サードにストリートパフォーマンス部で活躍していた同級生。その時の私は何にも考えていなかったが、今思うとピッタリすぎる。いつのまに、そして、どうやってスカウトしたのだろうか。
まぁ、そんなこんなで、再び楽しく一生懸命、部活で汗を流しました。日焼け止めもせずに炎天下で練習していたせいで、いつも真っ黒な肌でした。元々は白めの肌なので、今だと想像しにくいかもしれないけれど、しっかりと肌へのダメージは来ている。
私が卒業してから、ソフトボール部は再び強くなったらしいけど、のちに卒業生も含めて部員が集まった時、顧問の先生が私たち2人は偉かったと言った。おかげで、部が存続したと。Rは、「あいつ、たまにはいい事言うよな」みたいなことを後で言っていた。ちなみに、私は、3年間、一度もRをあだ名で呼んだことがなかったと思う。あだ名ばかりか、苗字も名前も。Rは、私が「いつもねえねえとかで、名前で呼ばない」と不満を言っていたことがあるけど、なんだか最初にあだ名を言いそびれて、今さら呼べない、なんだか恥ずかしい、けれど、苗字で呼ぶのも変。で、結局、過ごしてしまった。

そんなこんな思い出の詰まったグローブが家にやってきた。けれど、またクローゼットにしまっておくのも、どうだろうか。
意を決して、売りに行きました。また誰かに使ってもらえますよう。
2度目の人生を。

ちなみに余談ですが：
2017年の伊勢丹（新宿店）のバレンタインカタログのイラストレーションを担当させていただきました際、カテゴライズを部活っぽくさせたいというご要望をいただきました。その中で運動部のページはソフトボール部をイメージさせていただきました。