自己紹介とこれまでのあらすじ②
倒産……青天の霹靂……なんだかドラマチックですね!
他人事であったなら、さぞ面白かったことでしょう。
それはさておき。
その日も私は会社立ち上げの準備のために徹夜で作業をしていました。
「責任者として兵隊を統率」などというと格好いいですが、まだその時は立ち上げ前です。他には誰もいない。つまり一人っきりです。ぼっちです。
新サービスの策定から約款作り、あらゆる営業資料から契約書類の作成。やることは正に山ほどありました。それを独りでこなすわけです。私は差し迫ったサービス開始日に向けて、会社にほぼ毎日泊まり込みで作業していました。
その私を子会社の社長が手招きします。
「ちょっと話があるんだけど……」
なんだか申し訳なさそうです。
んー? スケジュールが前倒しになるのかなー? また仕様変更があったのかなー? それとも──。
社長が続けた話は私が先読みしたどの話題とも違っていました。
「倒産するらしいんだ」
「はい?」
とうさん? 父さん? とうさんってなんだろ。
あ、倒産か。あ、いや、でもまだ会社立ち上がってないんですけど?
設立される前に倒産するってそんな莫迦な。
混乱する頭で申し訳なさそうな社長の話をおっかなびっくり整理するとこうです。
私が所属していた親会社は光通信の代理店でした。強硬な営業と押しの強さで有名だったベンチャー大手光通信。もちろん代理店に対してもプレッシャーは半端なく、親会社は光通信傘下からの独立を画策していたのだそうです。その為のアプリケーション大手との業務提携であり、その隠れ蓑のためのアウトソーシングでした。
それがどうやらバレてしまったらしい。
噂ですが、光通信側は親会社に支払う予定だったコミッション7億を踏み倒したんだそうです。とは言え、この親会社も当時は既に資本金は億を超え、社員数も400人を数えました。何も横槍が無ければ間もなく店頭公開すら控えていたほどの会社です。普通だったら7億程度キャッシュフローが狂ったくらいでは倒産まではしないはず……なのですが。
しかしそこは自転車操業がお家芸のITベンチャー。しかも子会社を設立すると同時に豪勢な新事業所への引っ越し直後。そのタイミングを狙ったと言えるのかもしれません。まあ、それも何もかも結果論です。
ともあれ現実として倒産したのです。おしまい。
時節は3月。
大広間に集まった400人の社員が一斉に退社届を書くシュールな光景。
前の演壇に出てきた普段は滅多に見ることもない社長が「諸君……すまない!」と大げさなくらい叫びながら涙声を上げる様を「なんだか卒業式みたいだな」などと他人事のように感じていたのを思い出します。
いやー人生本当に何が起こるかわかりませんよねー(苦笑)
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