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炭酸水の空

「いい天気。薄らとしたあの雲は炭酸水の集まりだよ」
「雨が炭酸水なのは酸性ということだから、環境としてはどうかなぁ」
「お前、理屈っぽいって言われるだろう?」
「主にお前にな」

「サイダーが似合う空だと思わない?」
「唐突だね」
「あぁ、出来れば外で飲みたい」
「外で飲むならラムネのがよくない?」
「いいねぇ、あるの?」
「ないよ」

「何?その目?あ、でも、そう言えば、炭酸水と間違えてサイダー買ってなかったかな?」
「まじ?」

「奇跡の1本。我が家にジュースがあるなんて」
「なかったら炭酸水でもよかった」
「それもありだけど…どうする?サイダー飲む?」
「飲む」
「はい」
「えー?一緒に飲もうよ」
「仕方ないなぁ。グラスに分けてくるから待ってて」

「何、ベランダに出てるの?本当に外で飲む?」
「ほら、だって、気持ちいいよ」
「はい、これ」
「うわっ、冷えてる」
「ずーっと冷蔵庫の中にいたから」
「乾杯しよ」
「いいよ」
「あれ?何の乾杯だよとか言わない」
「言わないよ。察しがつく」
「じゃあ、一緒に言おうよ」
「何、それ?」
「いいから、いいから。じゃあ、せーのーで」

『炭酸水の空に乾杯』