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【プールの紅トーナメント】#毎週ショートショートnote

「プールの中が青って誰が決めたんだ?」施主が言う。
「他の色だと具合が悪いのか?」
どうなのだろう?残念ながら自分は泳げないからよくわからない。
でも、まぁ、個人宅の屋内プールだ。好きな色にしてもいいだろう。
「赤、紅色ってどう?」
僕は正直言って趣味が悪いと思った。赤く染まったプールに浮かぶって。
「あー。これはイメージと違うな」
施主が言う。
赤色は一番、人によって見え方が違う色だ。
紅色だと思ってこちらが提示しても違うと言われても仕方がない。
「水を入れるとまた色が変わるもんだね」
「ライトの色でも変わるのか」
施主の注文に振り回されつつも、それだけ予算を割ける相手だから「まぁいいか」なんて思ってしまう。
『プールの紅トーナメント』僕は密かにそう呼んでいた。
敗者復活もある終わりなき戦い。
プールに限らず、家の内装に差し色のように入る紅。プールの紅だけ決まらない。施主はなぜ、そうまで紅に拘るのかわからない。
トーナメントは今日も続く。