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【放課後ランプ】#毎週ショートショートnote

放課後ランプが灯ったら、振り向かずにまっすぐ家に帰れ。
「さもなくば…」
「さもなくば?」
津田はノートを置くと「そこまでしか書かれていない」と言った。
「ランプと言ったら相当昔だよね」澤が言う。
「うーん」津田が唸る。
「どうした?」
「このノート、日焼けしてるけどそんなに古くないんだよね」
「そうなの?」
津田はミステリー研究家なだけでなく文具オタクだった。
この学校が廃校になったのは3年前。
「『放課後、ランプが灯ったら』ではなく『放課後ランプが、』だとしたら」
「放課後ランプってなんだ?」
「わからない」
ふたりはどちらからともなく顔を見合わせると、ゴクリと唾を飲み込んだ。
廃校理由は、生徒の数が減ったからばかりではない。と言われている。
「出よう」津田が言った。
澤も慌てて立ち上がった。
ふたりはバタバタと駆け出し、廃校を出た。
「ここまで来たら大丈夫か?」
廃校を望める丘の上で双眼鏡を構えた。
そこには懐かしい色の灯りが確かに灯っていた。