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【文学トリマー】#毎週ショートショートnote

出された名刺には「文学トリマー」とあった。
「え?編集さんですよね」
「そうです。この度担当させていただくことになりました」
歳の頃は30歳前後だろうと思われる、化粧っ気の少なめだが明らかに美人と呼べる担当は口元だけで微笑んだ。
「書籍化の際の、紙面の構成なども担当させていただきます」
小説も、作家が書いたものがそのまま本になあるわけではない。
担当が読んでわかりにくいところなどを指摘してもらって修正する。書籍化する際も改頁などにあたって読みにくい箇所は言葉を入れ替えることで文字数を調整することも必要だ。
「それらに精通しているものとして与えられる称号が文学トリマーなんです」
今度は目元も微笑んでいる。
その微笑みに僕は少しドキリとした。
「先生のような新人作家さん専門なんです」
ということはある程度慣れてしまったら別の担当になるのだろうか?
「それはちょっと寂しいな」
思わず言ってしまった。
担当は驚いたような、呆れたような顔をした。