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告白

「好きだというだけが告白じゃない」
「何だよ。急に」
「俺に何か告白することない?」
「ないなぁ」
「実は…みたいな」
「ない。少なくともお前にはない」
「何?俺には常にオープンハート?」
「何だ?オープンハート?」
「隠し事してない?秘密とか?」
「言ってないことはあっても、秘密はない」
「言ってないこと?」
「気になる?」
「そう言われると気になる」
「でも聞いたところで『で?』ってなるだけ」
「そうとは限らない」
「例えば俺のじいちゃんの名前とか」
「変わった名前?」
「ううん。イサオ」
「じいちゃんってさ、ふたりいるじゃん」
「親父の方のじいちゃんは知らない。だって、俺が2歳の時に両親離婚して、それっきり親父にも会ってないくらいだもん。じいさんの名前なんて知るはずないだろう?」
「え?おまえそんな小さな時から母子家庭?」
「あれ?知らなかった?」
「うん」
「そっか。じゃあ、これが俺の秘密ということで」
「え?秘密にしてたの?」
「どうだろう?親父の話が出ると話していたかも。そういえばお前は訊かないよね。他人ちの話」
「うん。まぁ」
「まぁ、他人の家の事情なんて興味ないよね」
「いや。なんつーか、そっちが話さないことをこっちがいろいろ訊くのもどうかな?って」
「何だよ。さっき言ってることと真逆じゃん。秘密を教えてって言ってたクセに」
「いや。そこで話したら、それは秘密ではなくおまえが話したいことなのかな?って」
「・・・」
「何だよ?」
「お前こそ何かあるんじゃないの?告白したいこと」
「い、いや、別にないよ。俺こそおまえにはオープンハートだよ」
「そうだったんだ。全然気づいてなかったよ。ゴメン」
「そこで謝られても困る」

「何やってんだよ?」
「え?あれ?いつからいた?」
「お前がひとり遊びし始めた頃からずっと見てた。ゴメンな寒いところ待たせて」
「いやいや。大丈夫。俺がちょっと早くきただけだから」
「じゃあさ、とりあえず行こうか?みんな待ってるし」
「そうだね」
「でさ?お前、俺に何か言いたいことあるんだろう?」
「秘密にしていることとか、隠し事とか」
「そうだなぁ…言ってないことはあっても、秘密はない」
「言ってないこと?」
「はい。会話一周した!」
「こっから既に聞いてたんだ」
「ちなみにじいさんの名前はシゲルとタケゾウ」
「げ…」
「じゃあさ、今一番旬な告白しようか?」
「なになに?」
「俺、お前よりも先にここに着いてた」
「なんだよぉ。声かけろよぉ」