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モッツァレラチーズ

「モッツァレラチーズとかさ、打つの面倒くさい」
「何が?」
「モッツァレラチーズってさ、入力するとき面倒くさくない?」
「考えたことないな?」
「小さい文字なんていうの?」
「拗音」
「入力するとき面倒じゃない?」
「そう?」
「ローマ字入力するとき面倒じゃない?」
「ごめん。俺、かな入力」
「そうなん?」
「うん。だからシフトキー押すと小さくなるから考えたことなかった。」
「小さい『つ』も?」
「促音」
「ソクオンっていうんだ」
「うん」
「じゃねぇよ」
「いいノリツッコミだね」
「だからそうじゃないって」
「かな入力はそのまま打てばいいからね」
「でも、覚えなくちゃならないキーは多いよね?」
「そうかな?同じキーの数じゃん」
「そりゃそうだけど」
「そもそも拗音、小さい、や・ゆ・よがつく文字って決まっているじゃん」
「いを除く『い段』」
「ん?・・・あ、そうかもしれない」
「だからきちんと入力の仕方決まっているじゃん。ローマ字だと子音の音+ya、yu、yo」
「おまえ、かな入力なのによく覚えているな?」
「ローマ字入力をしないとは言っていない。タブレットとかはローマ字入力だし」
「そうなん?設定できない?」
「あいうえお順に並ばれても逆に打ちにくい」
「そういうもん?」
「うん」
「試しにさ、そこにあるタブレットでモッツァレラチーズって入力してみてよ」
「しつこいね」
「それが俺のいいところなんだよね」
「はいはい」
「スルーしやがって」
「あ、ダメだ」
「何が?」
「『もっつ』まで入力すると予測変換でモッツァレラが出てくるから、おまえの言う打ちにくさを体感できない」
「オーマイガッ」
「それにさ。俺、多分人生で初めて『モッツァレラチーズ』って入力していると思う」
「そう?」
「モッツァレラチーズに用はないからね」
「和食派だしね」
「拗音面倒くさいなら『東京出張』とか打つの大変じゃない?」
「・・・うん」
「『手術室手術中』とか」
「言うのも面倒だよ」
「言うといえばスウェーデンってさ、話すときほとんど『スエーデン』じゃない?」
「スエーデン…スウェーデン…スエーデン…そうかもしれない」
「だろう?」
「ウの立場がほとんどない」
「英語とかでさ、よくさ単語の中のhは発音しなくていいですとかあるけど、日本語はそういうのないじゃん」
「まあな」
「だから気になる。かな入力していると、普段話している音で入力しそうになるんだよね」
「そうなんだ」
「俺だけかもしれないけど」
「モッツァレラチーズの入力が面倒っていうのも俺だけなのかなぁ?」
「ローマ字入力してる誰かに聞いてみないとな」
「だな」