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14

「最近、ふと気がつくと14って数字が見えててさ」
「あ、時計見ると2:22っていう時あった」
「あるね、ゾロ目の時って。自分のは時計じゃないんだけどね。看板とか案内とかチケットなんかに、ふと気がつくと14ってあるんだ」
「ふうん」
「なんか意味あるのかなぁ?とか思ってるんだけど」
「ないんじゃない?」
「なんで?」
「だって14なんて中途半端だよ」
「中途半端?」
「そう思わない?」
「14に意味見つけるの難しそう。13だと縁起悪そうだったり15だと区切り良さそうだけど14ってさどっちつかずだけど素数でもないし」
「素数?」
「知らない?素数」
「あ…」
「2、3、5、7、11、13、17、19、23…」
「知ってる」
「なんか地味だよね。おまえの誕生日だって13日だろう?あ、演技悪い13だ」
「なんだよ」
「でもさ、13だと覚えてもらえるだろう?」
「まぁ、割と」
「14だとなんか“そのへん”程度にしか覚えてもらえない」
「そうかな?」
「ツバメのマスターが言ってた。マスター10月14日生まれでなかなか覚えてもらえないって。俺は数字聞くと覚えてる方だから、マスターの誕生日の話したら、よく覚えてるねって感動された」
「マスターと誕生日の話なんてするんだ」
「まぁね。その時6も地味って話したなぁ」
「6?」
「6なのか8なのか9なのか…って言われるって。でも、8も9もそれぞれ印象に残るとか。なんとなくわかるなって思った」
「そう?」
「6月、祝日ないし」
「そうだな」
「でもさ、地味だけど、6はおっとりしているというか、マイペースというか、そういうことも気にしてないような雰囲気なんだよ」
「おっとり?」
「14は密かに焦ってるというか、でも、伝わらない。自己主張が下手なんだろうね」
「自己主張…」
「14はタロットカードで節制で穏やかさを意味するんだって。いいんじゃない、穏やかって。きっと今はそういう時なんだよ」
「何?急に」
「シンちゃんが言ってた。タロットするじゃん、アイツ」
「あ、あぁ」
「13の死神と15の悪魔に挟まれた14の節制。変な感じのような、収まり良いような、違和感ありまくりのような。でもさ、平穏というか穏やかさってってそんなもんじゃない。いろいろ起こりうるアクシデントやら不幸なんかの隙間にあるんだよ」
「…そうかもしれない」
「今がその平穏なときってことなんじゃない?」
「そうなのかな?」
「珈琲淹れるけど飲む?ツバメのマスターに貰ったんだ新しい豆」
「飲む」

パタリという微かな音がした。
窓辺のフリップ時計は14:14。
穏やかな昼下がりだった。