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【桜回線】#毎週ショートショートnote

状況は最悪だった。
テロリストたちにこちらの動向が把握されている。
この中に相手に情報を流している者がいるのか?
それとも他の誰かが?
本部からの指示はそのまま待機。
もう3日移動基地の車の中で5人はじっとしているしかなかった。
「いったい何を考えている?」
それは誰に対しての疑念なのかわからない。
部隊長は密かに桜回線が何か伝えてくるのを待っている。
各部隊長と本部の司令とのホットラインは通称桜回線と呼ばれている。
なんてことはない司令の名が櫻井なだけである。
しかし、この桜回線、滅多なことでは繋がらない。かと思えば、いきなりこちらに連絡を寄越して鶴の一声で状況をひっくり返す。司令を魔法使いと呼ぶ者もいる。
「ふん」
部隊長の苦笑いに部下がそっと視線を向ける。
「何か?」
「いや。これが終わったら花見がしたいなと」
「はぁ…」
「そろそろ桜が咲くだろう?」
いやすでに外では桜が舞っている。
不意に部隊長が左耳を押さえる。
その仕草に皆息を詰めた。