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#11 腑に落ちる 【1.共感】

前回からの続きです.

以下の5つのプロセスの共感について書きます.

  1. 共感 Empathize

  2. 問題定義 Define

  3. 発想 Ideate

  4. プロトタイプ Prototype

  5. ユーザテスト Test

デザイン思考では,ネットに落ちているデータや情報を集めるよりも,ユーザーインタビューによって得られる一次情報を大切にしています.
ユーザーに共感することによって違和感(=ざわざわ)を得て,潜在的なニーズ=インサイト(建前に隠れた本音,第三者から見たツッコミ)が生まれます.



インタビュー

インタビュー方法

始めは知り合い伝いでインタビューをしていました.初めての経験だったのでかなり手さぐりの状態から始めました.

後でインタビューを振り返って,気になったことや抜けがあったり,ユーザーインタビューでもう一度話を聞きたくなったりするので,終わり際に次回の約束をしてしまうのが良いです.最高で5回くらいインタビューを受けてくださった方もいました.

インタビュー先も徐々に尽き,なりふり構っていられず,最後はSNS(XとInstagram)で個人宛にDMしたり,協会の会社リストの上から順にシステマティックにメールを送ったりとローラー作戦を使っていました.(30件くらいメールしたのにほとんど返ってきませんでした)

最終的にはInstagramで知り合った方(TikToker)をターゲットユーザーにして,プロダクトを作りました.


仮説を立てる

何も仮説を立てないまま行き当たりばったりの質問をしてしまうと,雑多な情報ばかりになり,次のフェーズで苦労してしまいます.そのため,ある程度仮説を立て,あらかじめ質問事項をまとめていました.
ユーザーが属する会社の規模やユーザーの役職,職歴,仕事内容などによって都度作り替えていました。

とはいえ,インタビューの際は,ユーザーの回答によって臨機応変に対応していく必要があります.
大きなカテゴリを決め,優先度順に小さな質問を並べます.このカテゴリは〇分など時間配分も意識して1hくらいを目安にしていました.
事前に質問内容やプロダクトアイデアを送ったり,ジャーニーマップを書いてもらったこともありました.

仮説と違う回答が得られるとそれが違和感の種となることがあるので,仮説は立てるべきです.深い洞察がない簡単な予想が当たったいう場合ならただの確認作業なのでダメなインタビューになります.


役割を分担する

インタビューで得られた情報を見て後から共感しても良いインサイトは得られません.その場で即座に共感することで深い質問をすることができます.ユーザーの行動に対しての理由や考えを知るため,なぜ?なぜ?を繰り返していました.

自分は性格的にあまり人に興味が持てず「共感して深く質問する」というのが苦手でした.(世の中のことに対しての知的好奇心はあるので,初対面の人と話すときはその人の専門分野や趣味など個人から派生した名詞について話を広げることが多いです)

どうしても「産業的にはどうなっているんですか?」,「昔はどうでしたか?」など広げる質問しかできず,深める質問は他のメンバーに任せていました.
深堀する人,全体を見渡す人,記録をとる人
の3人がいると良いです.逆に客観視は得意なので,書記に徹し,抜けている部分を補ったり,軌道修正をする役割を担っていました


個人の声を聴く

自分たちは「働く人の課題解決」がテーマでした.そのため,インタビューに行っても「私たちの職業では一般的に~」「~することが多い」「産業的には~」など個人ではなく職業としての回答が多く,なかなか共感をしにくい情報が多かったです.
特に一歩俯瞰して会社を見ている社長やベテランはこの傾向は高く見られました.

そのため,個人に向けて細かく行動を聞いていくことを意識していました。質問する時も「この職業では~?」と聞くのではなく「○○さんは~?」と聞くとより具体的な話が聞けました

特に社長や上司が同じ空間にいるとポジショントークをしてしまうので,ありがちな回答しか得られません.「上司に隠れて本当はダメなことをしている」,「会社に不満がある」などの情報を聞き出したい場合は,一人に対してインタビューが有効でした.


生存者バイアスを疑う

また,熟練者だと慣れによって苦労をあたりまえに感じているので課題が見つかりません.その場合は,新人にインタビューすることが有効だと感じました.

新人は,苦労した経験が新鮮な体験として残っているので,潜在的な課題がを見つけやすくなります.経験が少なく勝手にパターン化しないので詳細な自分視点の行動も聞くことができます.

しかし,新人の課題解決に注目しすぎた結果,熟練者から「これはいずれ慣れるから大丈夫」と言われたこともありました.
「できなかった人は離職してしまうので適応できた人しかいない」という生存者バイアスの可能性もあります。結局は、離職者に話を聞くことができないので小さい課題であると結論付けてしまいました.

(何かの原因で離職した人、離職しそうな人を見つけるのは難しく、残っている人に離職原因を聞いても真の理由は分かりません)

ちなみに,生存者バイアスは個人だけではなく,企業にも適応されます.そもそも問題を多く抱えた企業は、学生に割く時間がなく、問題意識も低いのでインタビューを受けてくれません.
必然的に問題を無くす努力をしているホワイト企業へのインタビューになってしまいます.


共感する

共感の定義

デザイン思考での共感は少し意味が限定的になります.感情移入をする同情ではなく,インタビューする前は理解できなかったが,インタビューを経て理解したことを共感と呼びます.
同一視と客観視の中間の状態,腑に落ちる
という言葉が正しいです.

共感は言語化が難しいです.共感から得られた,インサイトに対して教員やTAから「本当にユーザーはそんなこと考えているの?」,「こっちの考えが普通じゃない?」と指摘されることがあります.
これに対して「ユーザーはこう考えているはずです!」と自信をもって言えればある程度共感ができていることになるのだと思います.

インタビューをしていない人からはわからないユーザーの思考をインタビューすることで理解した状態だからです.

また,共感の深さや速さは,インタビュアーの生い立ちや教養,知識,性格などが大きくかかわります.チーム内でも共感が分かれることが何度かありました.

共感に関しては、特にチームの多様性が活きます.自分が共感したことのチーム内への共有が上手くなると圧倒的にアイデアを出すスピードが上がります。


Empathy Map

スタンフォードのd.Schoolで採用されている共感を深めるためのフレームワークです.ユーザーの感情や行動を整理するときに役立ちます.

ただ,一つ一つの出来事にこれをやる余裕はなく,自分は、授業で使ったきりプロジェクトでは使いませんでした.

↓サイトから引用


まとめ

共感をしながらインタビューをすることが望ましいですが,結局はインタビュー→共感→仮説→インタビューのような流れになってしまいました.

理屈で理解しようとしてしまう性格も相まってなかなか難しかったです。

続いては2.問題定義です.感覚を理論に落とすフェーズなので理解に苦しみました。


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