#12 洞察する 【2.問題定義】
前回からの続きになります.
以下の5つのプロセスの問題定義について書きます.
共感 Empathize
問題定義 Define
発想 Ideate
プロトタイプ Prototype
ユーザテスト Test
インタビューからわかったこと,現場の観察で分かったことに共感をすることで,より潜在的でユニークなinsightを見つけます(洞察).問題定義は,この潜在的なニーズ(インサイト)を見つけるフェーズになります.
Point of View
=POV ユーザーにインタビューし共感することで得られる新たな視点のこと.これによりユニークなInsightを得ることができます.以下の東工大EDPのフォーマットに入れることで見つかりやすくなります.
①~③まではユーザーの情報とユーザーの発言が入ります.後半の④~⑤には,観察やインタビューから得られた結果や自分たちの考えが入ります.
POVを理解し,完成させることに半分くらいの時間とエネルギーを割いたと思います.以下にPOVを立てるにあたっての気づきを残します.
Target UserとHowは詳細に描く
共感のフェーズが大切なのでペルソナを一人に絞ることが望ましいです.行動(How)にも「~な人が~が多い」「一般的に~をしている」と一般論を書いてしまうと共感が難しくなります.潜在的なニーズを探るためユーザー視点になって問いを立てる必要があります.
しかし,ユーザー1人にフォーカスすると需要が小さい課題の解決に走ってしまう可能性があります.そのため,ニーズの大きさ(時間,度合い,影響度など)を測ったり,ユーザーテストを繰り返して改善していきます.
ねじれたWhyをInsightで解く
一つの理由(Why)にはユーザーがインタビューで答えた「行動の理由」が入ります.社会システムや社会倫理,機能的・合理的なことは適していません.理由は以下の2点です.
新たな洞察が入る余地がないから.理解の先にある共感を大切にするため,現象や社会システムが入ると理解になり共感のフェーズがなくなってしまいます.(なぜなら,最も効率的だからだ→×さらに効率的にするのは難しい)
世の中に顕在化している課題であるため,既に解決されていることが多いから.(〇〇が不便だ→ユーザー自身も課題を把握しており,解決策が存在する)
ユーザー自身が抱えている感情や考えは矛盾を多く抱え,世の中に顕在化していません.インタビューでしか得ることができない情報なので優位性がある新しいプロダクトに繋がります.
ということで,理由には感情や考えを入れるのが適しています.
このことからも,デザイン思考の効果を最大限発揮するためには,より課題が大きく多くの人が参入している分野が適していると言えます.
ニッチな分野であれば,需要と供給の問題で「顕在化しているが,課題が小さいため解決されていない」ということもありえます.デザイン思考は,顕在化している課題に対してあらかた解決策が出きった後の焼け野原の中から小さな芽を探す作業に近いと感じました.
WhyとInsightの距離が離れているとそれだけ世の中に顕在化していない問題となるため新しい製品になります.
この二つの距離を授業の中では「世界のねじれ」と表現し,insightでねじれを解消することで新たなプロダクトが生まれます.
(距離が近いダメな例:〇〇が良いからだ.とはいえ,〇〇は良くない)
Insightの分類
Insightは直訳すると「洞察」となります.インタビューによって共感することで違和感(EDP的には違和感=ザワザワ)を得ることが大切です.この違和感を感じる作業が一番大変でした.
東工大EDPでは3種類のPOVフォーマットがあります.ユーザーの意見と自分の意見を考慮することで,最後にインサイトを立てます.
「正解のない問い」を立てる作業は,不安が多く,上手くいかないことの方が多いです.一応考えやすいように型があるものの.例外は数多く存在します.
教員の数だけ偏見も存在するので,ユーザーの発言を綺麗ごとや建て前だと判断する人もいれば,本音だととらえる人もいます.
インサイトのインパクト(ユニークさ)の指標は,「リサーチした人にしか気づけないものなのかどうか」になります.
リサーチしていない人からはニーズを感じられないけれど,リサーチして共感した人にとっては確実にニーズを感じられる.そんな時に新しい商品が生まれるのだと思います.
フォーマットについての詳細は教員のブログを見てください↓
インサイトの理解に苦しみすぎて,以下の本も買って読んでみました.デザイン思考の本ではないのでインサイト単体を深堀して分析や分類をしているのが主でした.
インサイトの4要素については東工大POVフォーマットに含まれていたことなので,別角度からの学びにもなりました.
場面:感情が生まれた場所,行動や状態
背景要因:感情や価値の背景的な理由
源泉要因:感情を生み出す元となった直接原因
感情:潜在的な感情,考え
デザイン思考に関しても色々派生があるのでいくつか本を読んでみたいです.
POVに対しての教員からの指摘
「これは本当にインタビューからわかったことなのか?」
「インタビューしていない人からしたら課題が小さいように見える,全体の中のどれくらいの課題の大きさなのかがわからない」
「WhyとInsightの距離が近い」
「ソリューションに対して近すぎる,幅がないのでユニークなプロダクトが生まれない」
「従来の解決のための行動(How)を変えられると良い」
Insightに関しては特に教員間でも様々なフィードバックがもらえます.別視点での考えが入ってくるため共感と同じく個人の属性や生い立ち,興味,関心,教養などが多分に関わってきます.
授業では機械系から融合理工系,建築系,美大や女子大,社会人なども参加しています.多種多様な人がいたからこそユニークなインサイトが生まれるのだと思います.
教員からの意見がバラバラだと混乱しますが,「正解がない問い」を立てているということが理解できると,次第にフラットに見られるようになります.真面目で勉強が得意な人の方が(特に東工大生の方が)教員やTAに振り回されているように見えました.
ユーザージャーニーマップ
文字に起こしたインタビュー内容を以下のようにMiroにまとめてめていました.一番使ったフレームワークだと思います.カスタマージャーニーマップと同じ意味です.
EDPではジャーニーマップをそのまま東工大POVフォーマットに利用できるようしています.
What:ユーザーの属性,状況
How:行動
Why:行動の理由(感情や考えが入ると良い)
横方向は時間を軸を意識して並べるのが有効です.課題となっている時間や場所の前後に解決策が潜んでいる場合があるからです.
ユーザーの行動を理解するために演じてみて(スキットしてみて)詳細に行動を描く必要があります.
まとめ
POVやInsightについては,結局完全に理解しないまま終わってしまいました.そもそも完全に理解することなど不可能なのかもしれません.
TAとして関わる機会があったら,俯瞰して見れると思うので改めて考えたいと思います.
次は発想です.
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