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一話はこちら 2 家に帰ってからも私は状況を呑み込めないでいた。 あのあと、マダムは武田さんに手を振って帰ろうとした。私は自分がやましいことをしているわけでもないのに、とっさにキッチンに戻り身を隠してしまった。 その後、バックヤードですでに私服に着替えた武田さんと顔をあわせたが、彼は何事もなかったかのように話しかけてきた。 「柏木さん、お疲れ様。今日、ちょっと大変だったね。大丈夫?」 先輩スタッフらしいそんな声掛けだったが、私は内心それどころではなかった。