感想:予測する心:内容は素晴らしいですが、訳があまりにも直訳すぎる

本書は自由エネルギー原理について解説した良書です。
この本の内容の素晴らしさは、様々な書評で絶賛されており、それらをご覧いただければ分かるかと思います。

ですが、本書は訳が英語をそのまま直訳したような不自然で回りくどい日本語になっています。
高校英語の和訳問題で、あまり出来の良くない学生さんが、関係代名詞でつながれた英語を機械的に順番に直訳して並べたりしますが、本書の和訳はそれとそっくりです。
意味の繋がる自然な日本語になるようにするためには、文章を意訳したり、順番の入れ替えをする必要がありますが、本書の訳にはそのような工夫が一切ありません。

例えば、ぱっと本を開いて目に入った一文はこんなかんじです。

「この錯視については多種多様な説明が提案されているが、もっとも支持されているものの1つである、大きさの恒常性が不適切に働いているという説明においては、この錯視は意識的知覚を決定する奥行きの手がかりについての事前信念の結果として扱われる」

どうでしょうか? 本文を一読して内容が頭に入ってくるでしょうか? 私には無理です。
この文章は、つまりこう言っているのです。

「この錯視について様々な説が提案されているが、最も支持されているのは、大きさの恒常性を適切に認識できていないという説明です。この説明によれば、錯視は、奥行きの手がかりについての事前信念が意識的知覚を決定することで発生しています」

この例は、まだ分かりやすい方です。
この調子で理解しづらい不自然な訳文が次から次に出てきます。

英語版の本を購入して、Google翻訳にかけながら読んだ方が理解しやすいとさえ思いました。
私は本書の意味不明な日本語にペン入れで訂正しながら読みましたが、本が書き込みで真っ黒になりました