感想:33歳独身女騎士隊長。 (3):戦争に負けて、外交に勝った歴史もある

本巻は完膚なきまでに叩きのめされた敗戦国のソクオチ国の面々に焦点が当てられます。

クロノワーク国とソクオチ国に街道が通され、商業が活発になることで、武人ばかりのクロノワークの行政が行き詰まります。
そこで敗戦国の人質王子であるオサナ王子が意外な外交手腕を発揮して、自国の文官を派遣します。
敗戦の原因を作った無能将軍のラッカも、行政においては天才的な手腕を発揮します。

また文官たちは男のほとんどが戦死したクロノワークでは貴重な結婚相手でもあり、彼らは女騎士と次々に結婚します。
オサナ王子は、彼女らを旦那と一緒にソクオチ国へ移住させ、ソクオチ軍を鍛え直すことを画策しています。

ソクオチ国はクロノワークの自由で享楽的な文化に刺激を受け、クロノワーク国はソクオチ国の豊かな物資で生活水準を向上させていきます。
オサナ王子は両国の文化が融合したことによるソクオチ国の新たな未来を見据えています。

また、オサナ王子はあることがきっかけでクロノワークの騎士団の絶大な支持を得て、シルビア妃殿下からは才能を認められ、エメラ王女とは仲良くなり、交流面でも成果を上げています。

敗戦して国が滅びかけた後に、外交手腕で国を復興させていくオサナ王子を見ると、私は敗戦直後の日本の首相、吉田茂の「戦争に負けて、外交に勝った歴史もある」という言葉を思い出します。

シルビア妃殿下は一筋縄ではいかぬ相手ではありましょうが、オサナ王子なら彼女ともうまく利害を調整し、ソクオチ国を再興させることでしょう。

本作は単なる下ネタ満載のエロ雑誌の箸休めマンガに見せかけながら、本格的な大河ロマンをしている凄い作品であります