感想:ネットの荒野を独り征く:ゆゆうた氏に見る成功するYouTuberの条件

1968年、現代美術家のアンディ・ウォーホールは「未来には、誰でも15分間は世界的な有名人になれるだろう」と発言しました。
そして現在、YouTubeやSNSにおいて誰もが一時的に世界的な有名人になれる時代が実際に到来しました。
その有名人の多くは、偶然のバズりか迷惑行為、暴言による炎上などで「15分間」だけ注目を集めて消えていく人ばかりです。

そんな一発屋ばかりがいる中で生き残るYouTuberさんは、他の人と何が違うのかに興味を持ち、私は登録者150万人の大物YouTuberであるゆゆうた氏の本を手に取りました。

本書は文字が大きく、余白も多めで、1時間以内に読めてしまう程度の内容の薄い本です。
ですが、私の知りたいことは十分に知ることができました。

まず、身も蓋もない話になりますが、成功する人には才能が必要だということが分かりました。ゆゆうた氏は相対音感やピアノの才能を持ち、手先の器用さ、長時間労働に耐えられる体力、それなりの良い大学や企業には入れるだけの頭の良さを持っています。
これらの能力の1つでも欠けていれば、氏の現在の成功はなかったでしょう。

しかし、どんなに才能のある人も、運が悪ければ消えてしまいます。
ゆゆうた氏は極めて強い悪運の持ち主でもありました。

ゆゆうた氏は、当初、YouTuberをしながらブラック企業で施工管理をしていました。
その会社の激務により、心が壊れるか、過労で倒れるかというところで、氏のアンチが氏の職場を特定し、会社に密告しました。
そのおかげで、氏はそのブラック企業を辞めることができました。
そして、氏が仕事を辞めたタイミングで空前のYouTuberブームが到来し、氏は今日の成功を掴みました。
あらゆる出来事が氏を成功に導いているかのようで、その強運には驚くばかりです。
(もちろん、本人の実力や努力があったからこそ、幸運を最大限に活かして成功できた事は言うまでもありません)

それにしても、氏のことが大嫌いなアンチの嫌がらせがきっかけで、氏が救われて幸福になるというのは皮肉な話であります。
本書において、氏はアンチの攻撃をネタにして配信すると言っており、有名人であり続ける人には、他人の悪意さえをも自分の糧に変えてしまう精神的なタフさが必要なのだと思いました。

以上をまとめると、当たり前すぎる結論ですが、成功するには、才能と強運と悪意耐性が必要ということです。
それにしても、ゆゆうた氏はその3つを兼ね備えた大物なのに、全く大物オーラを感じさせず、素朴な人物にしか見えません。

本書を読んで、ゆゆうた氏が成功した理由の他に、私が分かったもう1つのことは、氏は優しくて良い人だということです。
氏は下品なことを言っても、他人を傷つけたりすることは言わず、有名になってもおごり高ぶることはなく、他者への気遣いができる人物だと、私は本書を読んで思いました。

成功するのに善良さは必要ではありません。
その成功には不要なものを大事にしている素朴さが、氏の魅力の1つであります。