感想:あさひなぐ (34):あと20巻は必要だった作品

この作品は、描くべきことを描ききれずに駆け足で終わってしまった作品だと思いました。

島田は旭に初めて「怒りで戦う」とまで言わせた相手なのに、試合中に急に和解ムードになって因縁の対決はおしまいで拍子抜けしてしまいました。
島田と旭の因縁は初対面の対決で解決するのではなく、何度かの試合を通して和解していればもっと説得力があったと思います。

戸井田と宮路の最後の対決も描かれなかったのは残念です。
無理に高校時代で決着をつけさせずに、大学に進んでからの試合に持ち越してじっくり描いてほしかったです。
戸井田の狂気にも似た強者の孤独が、あの省略された試合で解消したとは思えません。

大工原たち後輩組の試合が、あまり深く描かれなかったのも残念です。
何巻もかけて描いてきた彼女らの成長が、試合において発揮される場面を見たかったです。

欲を言えば、宮路を旭の憧れの対象のまま終わらせず、真剣勝負をするところが見たかったです。
この2人の関係が「宮路の背中を追いかける旭」のままなのが歯がゆく感じました。

更に欲を言えば、大人組の真剣勝負も見たかったです。最後まで傍観者の立ち位置で終わってしまいました。

つまり総じて駆け足で終わらせたせいで、各キャラの物語が中途半端になってしまったと感じます。
一読者の勝手な願望でありますが、あと20巻くらいをかけて、旭と島田の因縁、戸井田の孤独の解消、宮路の復活、後輩組の活躍、大人組の本気、旭と宮路の関係の変化を描いてほしかったと思うのです