今後10年間でVCはなくなるかもしれない。~少なくとも今のような形態では。

最近、結構な危機感を頂いています。
長年、ベンチャーキャピタル業界に携わって、
自分でもベンチャーキャピタルファンドを運営しているにも関わらず
この形態が今後も続くのだろうかという危機感です。

何故そう思うかといいますと、いろいろなもののコモディティ化のスピードが早まる中で、“機能”や“便利さ”を追求しているものは、どんどん巨大
資本が強くなっていきます。莫大なマーケティングコストを費やして、
その機能と便利さを広げていき、結果として競合を排除していき、より利潤を拡大してき、そこからR&D投資をしていき、さらに強くなるというサイクルになっていきます。GAFAなんかが典型的な例ですよね。

これをスタートアップの文脈で考えると、機能や便利さのみを強みにしている企業だと持続的な成長が今後より難しくなると考えているからです。
もちろん、一部の起業家はいち早くそれに気づいて、大きな構想を描くことで、巨大なファイナンスを続け、自らがプラットフォーム化していくことで、生き残りをかけようとしています。

また逆に、一部の起業家は、プラットフォームを目指すというのではなく、
より情緒的価値というか何かしらニッチだけど意味のあるものを提供する
ことで生き残りを図ろうとしています。

どちらも賢い選択だと思います。逆にどちらにも属せない企業は、残念ながら淘汰される可能性すらあります。

これをベンチャーキャピタルの文脈で考えてみましょう。
プラットフォーム足りうる企業というのは、極小です。
感覚的には1/1000あるないかというくらいだと思います。
一方でプラットフォームを目指す企業のValuationは高くなりがちです。
シリーズAくらいのファイナンスから急激に上がっていきます。
そこに多くの有力なベンチャーキャピタルが殺到することで、さらに
Valuationが上がっていきます。
多くのベンチャーキャピタルはその期待値に成功確率(という根拠がないもの)を掛け合わせていき、そこからアルファ(市場平均を上回る収益性)を取りにいくわけですが、アルファを得られる可能性がどんどん減っていくのではないかと感じています。

ニッチだけど意味のあるサービスを提供する起業家はどうでしょうか。
こちらの場合、そもそもベンチャーキャピタルから資金を調達する必要性があるのかという問いがあります。ある種のファンビジネスにも近いわけで、熱狂的なファンは高い単価でも支払ってくれるわけですし、
場合によっては、意味のあるものであれば、クラウドファンディング等からでも調達できるわけです。

なんてことを考えると、ベンチャーキャピタルってそれほど儲からないのじゃないのかという気がしてきます。
確かに今後は、そういう可能性は高くなると思います。勝ち馬(と思われる)企業に、無理をしてでも限界までBetしていくのは、資本市場がグロースしている限りにおいては、最後に正当化できるかもしれませんが、
少し歯車が狂っただけで、大きく崩れるリスクと常に隣り合わせです。
また、資金調達の多様化によって、一部の企業にとっては、ベンチャーキャピタルが無価値になる可能性もあります。

こういうふうに書いていると、当事者でありながら、何やっとるんじゃ! と思われるかもしれませんが、要するに言いたいことは、ベンチャーキャピタルも今までのような形で安穏とやっていると、市場平均にちょこっとプラスくらいのリターンしか出せなくなってしまうのではないかということです。

ということで、ベンチャーキャピタルもまた、単にいい起業家と出会うというラッキーだけに頼るのではなく


「自ら機会を創出し、機会によって自らを変えよ」

という意識でいかないと、生き残っていかないのではないかと
思っています。

個人的には、投資家が、自ら課題を設定して、その課題を解決してくれるチームを探す、集めるというようなアプローチが今後益々必要になってくると思います。

以上、自戒を込めてのお話でした。


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