VCファーム経営:GPコミットとは

ベンチャーキャピタル(VC)ファームの経営の中身はあまり知られてないと思うので、今後何回かに渡り、その一部をご紹介したいと思います。本日はGPコミットメントについてお話します。

VCは、通常、機関投資家や金融機関や事業会社から出資を募り、ファンドを組成します。
ファンド組成期間中はファンドの運営者であるGeneral Partner(GP)は、
実に胃の痛い期間を過ごすわけで、それが平均すると1-1.5年くらいかかります。スタートアップと同様にピッチ資料を作って、いろいろな企業をぐるぐる回り厳しいDue Diligence(DD)を受けて、結構な確率で、断られたりしながら、必死で資金調達に明け暮れます。調達も大変なのですが、無事調達できたとしても、GP個人も、GPコミットメントというものがあり、通常、ファンド総額の1%以上をコミットすることが義務付けられます。
例えば、100億円のファンドであれば1億円以上のコミットが求められます。
それをGPの頭数で割って、それぞれ支払う、2人のGPなら5,000万円ほどコミットするという具合です。まあまあな金額でしょ。笑
もちろん、一括で支払うのではなく、キャピタルコールといって、ファンドが企業に投資する都度、ファンドの持分割合に応じて、支払う形になります。なので、投資が重なるときは、GP個人の出資金額も増えて、結構キャッシュフローがタイトになります。更に、1本目のファンドを組成して、だいたい3年後くらいには2本目のファンドを組成するパターンが多いのですが、するとタイミングによっては、キャピタルコールが二重にかかって、結構な金額になり、GPの皆さんは、青ざめたりします。笑
(ファームによっては、GPコミットメント分を会社の方で一定割合、給与天引きでキープしているところもあったりするそうです)

このGPコミットメント、GPにとっては、もちろん大変ではあるのですが、
VCファンドというスキームの根幹であるとも言えます。
ファンドの運営責任者であるGPが自分自身で結構な金額のお金をファンドに
出資してコミットするというのは、出資者であるLimited Partner(LP)に
とっては、GPが不退転の決意でファンドをリクウップさせてリターンを出すことに命を懸けることの何よりの証左になるから
です。
もちろん、ファンドの経営は、ファンドがリターンを得ることによって得られる成功分配(キャリー)だけでなく、ファンドの管理報酬(マネジメントフィー)というものを得て(通常管理報酬は、ファンド総額の2%を毎年受け取ることになります)、そこで様々な固定費(人件費や家賃等)を賄うのですが、やはりリターンを出さないことには、次のファンドが組成できないので、やはりGPコミットメントによって、GPとLPが同じ目線になることは極めて重要なのです。

近年では日本でもファンドサイズが巨大化して、結果として管理報酬だけでもかなりの金額になるので、GPがリターンを出すことに一生懸命にならないのではないかという批判もありますが、ファンドを大きくするとそれに伴い、人の採用も増えて、オフィスも拡大したりと結果的にコストも増えますし、何よりもGPコミットメントの額も増えますので、そのようなモラルハザードは起きにくいと思います。ちゃんとした職業倫理を持っているGPが前提になりますが。

ちなみに、私のファンドSTRIVEでは、GPだけでなく、ファンドに関わる全てのメンバーに(社員だけでなく業務委託の方も含めて)ファンドに出資する権利を提供しています。もちろん義務ではありません。そうすることでチーム一丸となって、ファンドを成功させるために行動しますし、それはすなわちご支援先のスタートアップにより意味のあるサービスを提供していくことに繋がるからです。

今回は、VCファンドのスキームの根幹にあたるGPコミットメントについて
お話させ頂きましたが、今後もVCファームを経営しながら、日々感じることを、徒然なるままに書いていこうと思います。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?