見出し画像

【一句鑑賞(003)】 薄氷に透けて幸せそうに水 (池田澄子)

薄氷に透けて幸せそうに水  池田澄子

池か水溜まりかバケツの中か、薄氷(うすらい、春の季語)が張っていてそこから下の水が透けているような情景。ここで思い出したのが次の句。

春の水とは濡れてゐるみづのこと  長谷川櫂

俳句αあるふぁ 編集部『水の歳時記365日』、10頁。

『水の歳時記365日』の解説ではこの「春の水」を、「澄んだ」秋の水や「鋭く張り詰めた」冬の水との対比で「やわらかく『濡れてゐる』」のだとしている。

最初の句の情景でも、きっと薄氷は「やわらかく濡れている」。やはり春の要素が含まれた氷なのだろう。「幸せそう」な水は、来たる本格的な春に対する作者の期待の投影であるようにも思われる。

出典

池田澄子「粛々」(角川『俳句』2023年1月号、「新年詠7句」)
俳句αあるふぁ編集部『水の歳時記365日』、毎日新聞出版、2022年。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?