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Japan XR Science Forum 2020 in US Midwest の開催を振り返って

7月12日に開催されたJapan XR Science Forum 2020 in US Midwestで企画委員長を務める機会があった。仮想現実の世界を舞台にし、家族で参加できるこの学会は、過去にない画期的なものであったと思っている。
この学会がシカゴの領事館で開かれることは昨年から決まっていたが、新型コロナの影響が大きくなった4月の一本の電話から事態は大きく動いた。
「過去にない形でVR(ヴァーチャルリアルティー)の学会として開催しませんか」 そこからの展開は、振り返ると本当に現実だったのかよく分からないくらい急展開ですごい人たちが次々と現れ、実際にお会いしたこともない中で運営メンバーが急速に団結していき、ヴァーチャルの学会会場が作られ、宣伝が広がり、スポンサーが続々と決まり、あっという間に学会が成立してしまった。
アバターで不思議な体勢で歩く参加者や、アワードを受け渡すキャラクターの動き、セレモニーを見て、私たちが何をしたかったのか疑問を持つ方もいるかもしれない。アバターでのポスター発表で、試行錯誤しながら自分の成果を伝えあおうとする研究者を見て、おかしくて笑ってしまった人もいたと思う。オンライン、VRに挑戦した科学教室も新しいメンバーと様々な工夫を凝らした授業が行われた、参加してくれた子供達の真剣な表情と笑顔を見ると、学会ができるアウトリーチ活動として非常い有意義な挑戦であったと思う。

コロナウイルスの猛威の中で、「挑戦をしたかった」というのが自分の中の本音かもしれない。全ては急ピッチで進み、学会の規模も拡大していった。最悪のケースも想定したが、危惧していたトラブルもほとんどなく、大成功だった。
本当に本当に素晴らしい運営の方々のおかげである。 

自分にとってはコロナウイルスの影響もその後に起きたBLM運動を含む一連の暴動やニュースも、一人の人間として何もできないという無力感を感じる時間が多かった。それは東日本大震災の時の感覚にも似ていた。
今回の学会があったことは、そういう意味では救われた。

科学教室では「うつくしさのひみつ」と題して、Japan XR Science Forumのあとも様々な色を扱う実験を行なっている。この活動には科学教室メンバー全員の強い思いが込められている。それは差別を生まない心を育てること、全ての生命が美しいというメッセージがのせられている。
光の実験では白い光の中に様々な色の要素が含まれていること、インクの実験では黒の中に様々な色の要素が含まれていることを勉強している。私たちは、子供達の思考や想像力を止めないために、あまり説明しすぎないことを心がけている。1回の実験では伝えられることには限界があるので、なんども実験を繰り返したり、他の実験を組み合わせることで多角的な思考を生み出すことが意図されている。 
今週、「白と黒の構成要素はほぼ同じである」という隠されてきたテーマが言葉にされた。

白と黒が一緒なんだ。

この一言を子供の口から聞いた時、その言葉の価値をかみしめることができた。挑戦が報われたと感じた。
この科学教室での僕の役目は目の錯覚、焦点、盲点などを子供に伝えることだったが、それは僕たちの見えている世界が、人それぞれ見え方が違ったり、同じ人でも心の持ちようによって全然見え方が違うというメッセージを伝えることでもあった。他者を理解する上で、大事な考え方だと思っている。

怒涛の2ヶ月が過ぎ、僕から見える景色も、少しだけ鮮やかになった気がしている。

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