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人生は一期一会

写真を撮ること自体は昔から好きで、カメラ歴はそれなりにあったが風景やスナップ写真が主であり、人物撮影、ポートレートに取り組むことになったのは、ここ1年ばかりの話である。

数年前に知人に勧められるままInstagramのアカウントを作ったのであるが、最初の方はジャンルに拘らず普段の生活でのことを主体としていた。ある時タイムラインに流れてくるポートレートの写真に目が留まりだんだんと惹かれるようになっていった。そして次第に自分も撮りたいと考えるようになった。それがポートレートを始めた動機である。

そうは思ったもののどうやって始めれば良いのかわからない。身近に被写体を頼めるような知人もいない状況である。まさに右も左もわからない状態であった。

そもそも、人見知りなので人物を撮ることについて自分の中で漠然とした苦手意識があった。もっと言えば"人"そのものへの苦手意識と言った方がいい。俗に言うコミュ障と言うやつである。それが人物撮影を避けていた理由であるが、今となってみれば些細なことからしれないが、自分には最も向いていない分野である決めつけていた節がある。

一番最初の撮影の前日、期待よりも不安の方が遥かに多くてあまり眠れなかったことを覚えてる(笑)。モデルさんとちゃんとコミュニケーションが取れるだろうか緊張して写真が上手く撮れるだろうかという不安があった。

実際に現れたモデルさんは写真で見る以上に綺麗な方であった。カメラマンとモデルとの1対1の撮影である、

最初はとにかく緊張したが、撮影をしていく中で段々とコミュニケーションを取ることができるようになった。(相手のモデルさんの気遣いがあったのは言うまでもないが)。つまらない意地を張っても仕方ないので、モデルさんには「ポートレートの経験がない」ことを最初に包み隠さず素直に話した。人と人との間において、そうやって自分を開示することがコミュケーションの一歩であると思ったからである。今振り返ればこの過程が大事だったのでないかと思う。ともあれ最初の撮影は恙無く終わった。

それから1年間、色んな場所でたくさんの方を撮らせてもらった。拙かった撮影技術やレタッチについても試行錯誤を重ねて来て最近ようやくコツのようなものを掴みつつある。

被写体となるモデルがいなければポートレートは成り立たない。カメラマンからすれば重要なパートナーであり、大切な存在である。仲良くすることに越したことはないが、距離感は大事である。特に異性同士だとあらぬトラブルに繋がりかねないので気をつけたいところである。

撮影の際には、モデルさんとコミュケーションを出来る限り取るよう心掛けている。相手には少しでも緊張を解してリラックスしてもらうためであり、会話の中から人となりを知ることができる。モデルの皆さんはコミュニケーションが上手な方が多いので、経験上では、こちらが話すよりむしろ聞き役になる方が潤滑な関係になる気がする。ともかく撮影の場が心地良いと思ってもらうことがいい作品を生む大事な要素になるはずである。

最初は自分自身の撮りたいと言う欲求で始めたポートレートであるが、最近は少し考え方が変わりつつある。撮った写真のデータはモデルさんにも渡すようにしているが、褒めてもらうことが多くなった。無論、社交辞令も含まれているであろうが、撮った側として悪い気はしない。あるモデルさんからは「tatsuyaさんの写真の色味とか雰囲気が好きなんです」と言われて本当に嬉しかった。

こちらも撮る以上は被写体の魅力をできる限り引き出して綺麗に写したいと言う思いがある。(ただ、その思いに対して自分の技術が追いつけていない部分があるのは否めないが)その時その場所でしか撮れない掛け替えのない瞬間を切り取りたいと思っている。モデルさんに喜んでもらうことを第一に考えて撮るようにしている。

相性の良いモデルさんはできる限り撮り続けたいと思っているが、永遠に続く訳ではない。学生の子であれば就職であったり、結婚、転職、引越しなどの環境の変化により撮影できなくなる日はいずれ訪れる。その時に後悔しないよう、毎回これが最後かも知れないと言う"一期一会"の気持ちで臨まないといけないと思っている。

つい最近、初めてモデルを努めてもらった女性と久々に撮影する機会があった。その時に彼女に言われたのが「(この1年間で)どんどん写真が上達していってると思います。なんか上から目線で申し訳ないですが・・・」「何ていうか、ただ撮るんじゃなくてポートレートを楽しんでいるように見えます」と1年前の自分を知っている彼女だからこそ発した言葉が自分には堪らなく嬉しかったし、それまで漠然としてきたことが報われたような感覚を覚えた。

ポートレートを始めた頃は全くと言っていいほど自信がなかったが、最近になってようやく、彼女や他のモデルさんからも写真について有り難い言葉を頂くことが増えて、それが励みとなり今の活動の原動力になっている。

技術的にはまだまだだし写真が上手くなりたいという気持ちはこれからも持ち続けるだろうが、今は1回1回の撮影の積み重ねを大事にしていきたい。


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