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VRや主観での足音サウンドの考察

自身の足音

ゲームであれば、スピーカーの中央から鳴らすことで
足音は表現されます。

アニメーションでも映画でも、足元にスピーカーは存在しません

物理的な視点でシミュレーションを検討すると、
足音は靴と床のあたった音、それに伴う床面全体の振動、近接の壁の反響など、指向性のある反射音など、さまざまな現象が考えられます。

足音らしさ が重要になります。
足音としての認識を誘導する必要があります。

VRではヘッドフォンの位置で足音を鳴らせるのですが、
かなり無理があります。

また、主観のカメラであるため、その存在をもっている足音があると、
実在感がある可能性があります。
宙に浮いているのか、幽霊のように足がないのか。

移動して足元で鳴らす音の特殊さ、省略のされ方

足元で鳴っている感覚はどんなものか?

自分の歩く音というのは、客観で聞いている他の人の足音とは違って、
自分で動かすという意識、足からの振動、その微妙な感覚から床面の材質感、床の角度、靴底の異物感、姿勢の制御をする手助けになったりと情報がとても多くあります。

それらは、あらゆるメディアでは、省略されます。
それらを再現する仕組みが無いため、どこまで模倣しようとしても、難しい課題です。

床自体を切り替える、フォースフィードバック床 みたいなハードがあれば別かもしれませんが、研究目的以外では存在しない気がします。

そもそも、移動するのにスティックを傾けると移動
カメラで視点を回転したりとか
という認識も 慣れとかに依存しています。

足音の鳴るタイミング・周期

移動した量に応じて足音が鳴るのかどうか?

ゲームの中での移動量と、足音の周期を厳密にしすぎると、
早送りをしたような違和感のある足音になる可能性があります。
ゲーム内のキャラクターの歩幅、足の長さ、
性別や体格、年齢、健康状態など、歩き方の癖など、
不明瞭なものが多くあり、
また、ゲームの調整に応じて変化してしまう可能性の高い要素でもあります。

モーションのあるキャラクターであれば、モーションにゆだねて鳴らすアプローチも考えられます。

どこにコストをかけて、どこまでこだわるか。

段差の接地判定をどこまでやるかなど、ゲームのリソースにも影響します。シミュレーションと効果の判定、妥協点を探る必要もでてきます。

自分の音の認識

自分の足音が常に聞こえるかどうか?
聞こえているかもしれないけれど、認識されにくくなり、
自分の動作音は、フィルターされていく傾向があります。

常に意識して聞かなければならないシチュエーションはあまりなく、
例えば、自分の呼吸音とか 溜息をつくとか くしゃみするとか、
かなり特殊な場合でないと認識しない状態になります。

同様に、常に鳴らし続けることが正解とは限らないとも思えます。

変化に対して敏感であり、定常刺激に対しては鈍感になる傾向がある。

足音にかけるエフェクト

足音の波形が、耳に届くまでにさまざまな効果がかかります。

自分の足音は、距離としては、かなり近い位置ですが、
常にガシガシ鳴らしているとうるさい傾向があります。
また、特に情報として意味のない音になります。

一方、他のキャラクターの足音は、聞こえやすい可能性があります。

自分の鳴らしている音を客観的に聞くのは、残響成分になります。
直接の音はそれほど必要ないかもしれません。

聞かせたい・聞きたい足音かどうか

足音が重要な要素
近づいてくるキャラクターの位置の判断など
の場合、意識が向いている場合は、より聞こえるべきでしょう

カメラワークがある場合、
足元が見えない場合は、前後のカットで、足が映っていない場合は、省略されるかもしれません。

キャラクターが動いていることが強調されるようなシーンでは、音が鳴っているかもしれません。

主観の場合、足元はカメラの範囲から外れていることが多い。
足元を見ながら歩くとか、そういう、足音の演技に意味のあるもの
(体調や心情の表現)があるかなど、
足音をどういう用途で鳴らすのか のデザインが必要になりそうです。

足音を鳴らさない選択

足音がないと浮いている感じに思えてしまうのでは?
というところで、
もし、ゲーム中で、とても静かなシーンで。
さらに床が絨毯やフェルトのような床ではなく、下駄とかヒールとか、しっかり音がしそうな見た目かどうか。
そこで、鳴らさないと違和感を感じるかどうか。

古い建物の軋む床とか、ガラスの破片が落ちていて踏みしめた音が欲しいといった鳴らしたい欲求があるかどうか。

(例えば、足場の崩れやすいような場所で、荷物を落とさずに運ぶとかいったシチュエーションでの足音であれば、かなりシミュレーションして鳴らさないと、見た目との違和感が発生する可能性がある)

鳴らさない選択はコスト面でとても良いですが、鳴らす場面を限って、ここぞというときに説得力のある足音が鳴るのが最良かもしれません。

このような部分を検討したり、どうするべきかの相談だったり、実装の仕組み、どういうデータを用意すべきかなど、サウンドデザイナーやディレクター、ゲームデザイナー、モーションデザイナー、エフェクトデザイナー、背景アーティスト、プログラマなど関係各所とのやりとりなども
テクニカルオーディオデザイナー・サウンドエンジニアの自分の仕事の範囲になります。

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