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ゲーム音声ファイル管理戦記

特定の音声ファイルの処理を行いたいけど、なかなか難易度の高いことがあります。

例えば、
大量のダイアログ(セリフ、ボイス)音声から一部のキーワードが含まれているデータを削除したい

手作業でもできるけど、ファイル数が多いととても大変だし、
人間は間違いを犯すもの。

とくに数が多く、似たようなデータを見ていると、普段間違えないようなことも間違えてしまう。

何かしらツールを使うことで、対処したりもできるのですが、
ツールの機能を覚える必要があったりして、調べる時間も惜しい場合もあります。

音声ファイルを再生して、内容を聞いて、正しいかどうか、
都度聞いて確認するのは神経が磨り減る胃の痛くなるような作業。

さらにゲーム開発では追い打ちのように
- 突然の内容変更
- 体調不良・収録ミス(ノイズとか)
- 演技・指示・ミスディレクション
- 収録漏れ・リテイク
- 収録後の品質改善
など、雑に行えば、当初の予定とはことなる作業が雪だるま式に増えていく傾向があります。
もちろん、ゆったりとやっていては、締め切りのスケジュールが迫ってきます。

そんな時に精神状態を平常に保ちながら、最善のクオリティを目指すには?

もしかしたら、ダイアログデザイナー のような専門の職種の方が、各言語ごと必要なのかもしれません。 

そうはいってもそんな理想的な環境になるとは限らないので、
そういう事故が起きにくい、仕組み・構造・ワークフローを考えてみましょう。

ファイル名を決める

もし、「こんにちわ」というファイル名の
日本語・英語と言語別の音声ファイルがあったら、

こんにちわ_ja.wav
こんにちわ_en.wav
といったわかりやすい識別子をつけるかと思います。

ただ、ファイル名にテキストをつけたり、ファイル名に日本語をつけてしまうと、英語のデータを扱う人の母国語が日本語とも限りません。

海外で収録されたデータを正しくリネームできるか保証が難しくなるかと思います。

この「こんにちわ」はどこで使われるのか?
挨拶カテゴリなのか、ゲーム開始時の掛け合いなのか?
どのキャラクターの声なのか?
言語は? どんな内容なのか?

一つの音声でもいろいろな情報があります。

ファイル名に落とし込んでみましょう。

シーンID_キャラ名_カテゴリ_番号_言語識別子
といったルール

s000_ch1_start_00_ja.wav
s000_ch1_start_00_en.wav

だいぶ抽象化できました。が、セリフの内容がファイル名には含まれなくなりました。
このままだと、内容を確認するために、毎度再生する必要がでてきます。

シートで管理する

再生しなくても判断できるように、ファイル名と
その付属情報としてのテキスト情報を管理するシートを用意します。

このシートの整理や、管理のしやすさなども重要です。

ch1_start_00_ja,"こんにちわ"
ch1_start_00_en,"Hello"

こういう「,」の文字で区切ったファイルのことを
「CSV(カンマセパレート)」とよんだります。

文字列に「,」を使いたいケースがある場合
例えば、この文字をゲーム中に表示したいとかの場合は

制御文字のタブ「\t」を区切り文字とした
「TSV(タブセパレート)」と呼ぶ形式を採用したりします。

こういう形式のデータは、実はエクセルファイルとか
GoogleSpreadSheetといった、表計算系のツールから出力できるので、
管理しやすいです。

ついでに、納品管理・収録管理・実装チェックなどもこの
ファイル名=IDとして管理すると、一元管理できて良いかと思われます。

管理しやすいデータ形式であれば、表現系を変えることで、収録台本を出力したりといったことが自動化できたりします。

このような仕事に向いている人

  • 声優さんの収録現場に立ち会える

  • ゲームに組み込まれる前の音が聞ける

  • ボイスディレクションでゲームのクオリティを上げたい

なのですが、ゲームはとても大量に音声ファイルを扱うケースがあるので、
忍耐力でなんとかするのは事故が発生しやすいので、
自動化できるスキルも必須と思われます。

また、バグとしてミスがあったときの解決優先度のチケット管理とか
データのバージョン管理とかの知識も必要になります。

このような制作にかかわる部分の比較的テクニカルな部分を検討したり、どうするべきかの相談相手だったり、実装の仕組み、どういうデータを用意すべきかなど、サウンドデザイナーやディレクター、ゲームデザイナー、モーションデザイナー(フェイシャルキャプチャー・リップシンク)、プログラマなど関係各所とのやりとりから、ワークフローの設計・フォーマット・命名規則、サポートツール作成なども
テクニカルオーディオデザイナー・サウンドエンジニアの自分の仕事の範囲になります。

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