距離感の近い店員と俺。
少し前に友人と夕食を食べに行く機会があった。どこの店がいいと聞くと、決まって、どこでもいいと言うような人物だ。
いつものように主導権を得た。俺には推してる店があり、そこを経営難で潰すわけにはいかない。行く店が決まらない時は、いつも同じ店に行く。しかしその日はコロナの影響で推しの店は閉まっていた。
そこで、我々は近くを散策して、以前には間違いなくなかったであろう店を見つけた。
結局、そこの店に決めた。中に入ると外見からは想像できないぐらい、お洒落な雰囲気が漂う店であった。俺は普段から服装にそこまで気を使ってない。その時もクロックスに全身スエットのパジャマみたいな格好であった。
あまりに今の自分の雰囲気と乖離した雰囲気に思わずたじろぐ。
先客はオラオラ系の人たち4、5人と若い女性2人。コンクリート打ちっぱなしの壁。一定間隔で並んだソファ。
「なんかキャバクラみたいだな。」
俺がそう言うと、友人は
「行ったことないからわからん。」
それに対して、
「俺も行ったことないからわからん。」
全く、文章で書いても面白くない。こんなおもんない会話をしながら店員を待つ。
店員が来た。髭を生やしたちょい悪オヤジ。フランクな感じで話しかけてくる。こー言う感じの店ではあるあるだ。お洒落な店には馴れ馴れしい店員。もはやセットだ。ドリンクの注文をする。
ビールとレモンサワーを頼む。
ドリンクを待ってる間に食べ物を決める。
この店は、主要メニューは牛の希少部位だ。値段も少し高めだ。部位あるあるなのだが、名前を見ても何が何だがわからない。
ドリンクを持ってきた時に、ちょい悪オヤジに俺は質問する。
「これはどこの部位なんですか?」
するとちょい悪オヤジは、
「ここよ!」
と言い、俺の脇腹を触ってきた。やはり、馴れ馴れしいなこの店員。友人はこのような店員は苦手だと以前言っていたが、俺はこのような馴れ馴れしい店員には耐性がある。
アパレルに行っても接客してきた店員と1、2時間談笑だけして何も買わずに帰るということを普通にできる。
だから、この時も咄嗟にちょい悪オヤジに切り返す。
「うぇい!!そんなことするなら食べんとこ〜」
咄嗟の切り返しとしてはなかなか上出来だ。距離感を詰めつつ、ユーモアを交えた切り返し。
沈黙が3秒続く。
結果として俺は信じられないぐらいスベッた。スベッたと言うより、ガン無視された。
食べ物の注文が終わって、友人に聞く。
「さっきのって俺が悪いん?」
友人は答える
「いや、よくわからん。」
いや、全くその通りだ。何が起きたのかマジでわからなかった。俺は食べ物が来るまで、店内を見たりしてると、ちょい悪オヤジがまた絡んでくる。さっきのは何もなかったかのように喋りかけてくる。こいつは何者だ。
我々はその後、食事と談笑を楽しみ、そそくさと店を後にした。
数日経った今、不意に思い出す。
「あの時、俺が悪かったのかな」
全く、距離感の近い店員の扱いは難しいものだ。
Fig.1 よくわからん部位
貧乏学生の食費に費やします。