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外資コンサル流「議事録作成術」の極意:心構え編

ジュニアコンサルタントに課せられる重要なプロジェクトタスクのひとつ、それが「議事録作成」です。

「議事録作成ばかりやらされる。もっとクリエイティブで頭を使う仕事がしたい」

そんなimmatureな嘆きがよく現場から聞こえてきます。

一方で、そのように嘆くジュニアほど、上司であるマネジャーやシニアコンサルタントが求める水準の議事録作成スキルを持ち合わせていない、なんてことはよくある残念なパターンです。

「議事録を作成する」「会議のメモを取る」

これらのタスクが、いわゆる「雑用」と見なされる傾向にあることは否めません。「会議参加者のうち、最も階層の低い者(ランク・年齢など)が議事録を書くものだ!」などと認識している残念なマネジャーも一定数いるのは紛れもない事実。それゆえに、ジュニアコンサルタントの間でも「議事録作成は付加価値の低い仕事である」という間違った認識が蔓延してしまうのは、ある種仕方がないのかもしれません。

しかし、上記のようなジュニアにありがちな誤認識とは正反対に、「議事録作成=極めて付加価値の高いタスク」であると断言します。

社内ミーティングやクライアントミーティングの議論を、迅速かつ構造的に纏め上げられるジュニアがいると、シニアコンサルタントやマネジャーは大喜び。クライアントのニーズをバシバシ捉え、プロジェクト全体の成功にも直結します。一方で、まともな議事録を作成できないジュニアには、残念ながら「無能」の烙印が押されてしまうでしょう。目に見えるパフォーマンスを発揮できる機会が少ないジュニアコンサルタントにとって、議事録の品質はその人のスキル評価に直結する、といっても過言ではありません。

縁あって本コラムをご覧になった皆さんには、議事録作成への誤った認識を改め、本タスクをポジティブに遂行できるような思考の転換を図っていただきたいと思います。

なぜ議事録作成は付加価値の高いタスクなのか?

「議事録作成は付加価値の高いタスクである」。そのように断言する根拠は「書く側」と「見る側」両方の視点にあります。

「書く側」にとっての議事録作成の価値

ここでいう「書く側」とは、もちろんジュニアコンサルタントの方々。

そもそもの前提として、議事録作成は「会議参加者のうち、最も階層が下に位置する者のタスク」ではありません。上下関係に関わらず、あくまで「役割分担」に過ぎないのです。

例えば、クライアントミーティングのシーン。シニアコンサルタントが自身のアウトプットをクライアントに説明する、マネジャーがその補足や質疑応答をする。その中で、議論への貢献が中々難しいジュニアコンサルタントがせめて力を発揮し得るタスクである議事録を作成する。このような場合、あくまで「メンバーを適材適所に配備し、プロジェクトを円滑に回すための役割分担」としてジュニアコンサルタントが議事録を作成するのです。

もしパートナーがクライアントミーティングに同席していて、何も発言せずに1時間を過ごすくらいであれば、このパートナーが議事録を作成したって良いのです。ちなみに話は逸れますが、外資系IT大手「インテル」は、業務効率化等の観点から「会議の最上位者が議事録を作成する」というルールがあるといいます。

さて本題に進みましょう。議事録を書く側にとっての付加価値、それは「仕事をしてお金をもらいながら勉強ができる」ことです。議事録作成のタスクが与えられたら、ぜひ「ラッキー!」と思いましょう。プロジェクトについて、さらに言えばクライアントについて、マネジャーよりも誰よりも詳しくなれるチャンスを手にしたのですから。

ジュニアコンサルタントが議事録を作成していると、必ず理解できない箇所が出てきます。100%出てきます。そして「理解できない」原因は以下の2パターンに分かれます。

①そもそもの言葉の意味を知らないため
②なぜその文脈でその発言がなされたのか、が分からないため

①について、クライアントや上司のコミュニケーションを文字に起こすことで、基礎的なビジネス用語や業界特有のキーワード・表現を着実に自分の血肉にしていけます。当然、この常識力が、今後のコンサルタント人生においてベースになることは言うまでもありません。

②について、文脈の理解とは、上司がクライアントの抱える課題に対してどのような考えをもって、どのようなソリューションを提供しようとしており、それに対してクライアントがどのように感じているのか、まさにコンサルティング活動の本質です。経験の浅いジュニアコンサルタントにとって、会議の文脈理解が難しいことは仕方がありません。だからこそ、議事録作成の過程において、経験豊富な上司のアプローチを、陰ながら少しずつ学ぶのです。

当然、発言者である上司に「議事録作成のため、あのとき仰っていたXXXについて、その背景や意図を教えていただけないでしょうか?」と尋ねれば、上司は自身の「虎の巻」を喜んで共有してくれるのです。なぜなら、プロジェクトスタッフのスキルを高め、プロジェクトの成功確度・品質を限りなく高めることがマネジャーの仕事のひとつであるからです。こんな貴重な学習機会はそうそうありません。

「見る側」にとっての議事録作成の価値

ここでいう「見る側」とは、シニアコンサルタントやマネジャーなど、ジュニアにとっての上司、または、彼らが議論を交わすクライアントです。

PMO(プロジェクトマネジメント)のプロジェクトでは、各回のクライアントミーティングの議事録を成果物として納品することが少なくありません。その場合、マネジャーが必ずレビューはしつつ、議事録の作成自体はジュニアコンサルタントの主タスクとなります。

マネジャーやクライアントはその議事録に何を望むのでしょうか。

答えは以下の2点です。

・各ミーティングにおける決定事項や各担当者のToDo事項が簡潔かつ明確に分かり、プロジェクトを正しく円滑に推進することに寄与する
・さまざまなステークホルダーが混在するクライアントミーティングの場で、意思決定層である役員や現場責任者などを中心とするクライアントが抱える思惑やニーズを把握する

1点目について、対面のクライアントは、いくつもの定常業務がある中で当該プロジェクトも同時並行で抱えているというケースが大半です。コンサル側で実施すべきToDo事項は当然確実に遂行しつつ、クライアント側にて実施せねばならないタスクについては、言葉を選ばずに言うと、それを可視化して都度クライアントの「お尻を叩いて」あげないと、多くのタスクがスタックし、それがプロジェクト遅延にも繋がります。

また、得てして発生するのが、「言った/言ってない」「それはXXXさんの仕事だ」などといった実行責任の不在問題。これもプロジェクトの癌になるどころか、コンサル側に飛び火するとファームとしての評価を問われるリスクさえあります。各々のアクションを明文化し、プロジェクトを円滑に推進・成功させるために、議事録を軽んじることはできないのです。

2点目は完全にコンサル側の理論ですが、プロジェクトワークというものは、対面のクライアントの上司を始め、その企業の役員クラスにも接見できる貴重な機会です。プロジェクトワークで知り得たクライアントニーズは、当該プロジェクト以外の新規プロジェクトに繋がる可能性も秘めています。クライアントの細やかなニーズ・課題や、特有の言い回しなどを的確に抑えることで、受注確度の高い提案書を作成することができるのです。

上記の通り、繰り返しにはなりますが、議事録作成のタスクは非常に付加価値の高いタスクです。ジュニアコンサルタントは、社内のスモールミーティングであろうと、クライアント役員とのミーティングであろうと、「すべてのミーティングの議事録を作成するんだ」という気概を持って本タスクに臨むと良いでしょう。議事録作成の巧さは、その人がいかに場数を踏んだか、どれほど多くの議事録を作成してきたか、にほぼ比例します。「あ、こいつ議事録書いてきてないな」というジュニアの議事録はすぐに見抜けます。前述の通り、議事録作成のスキルはジュニアコンサルタントが持つスキルの印象・評価に直結してしまうので、前のめりに議事録を書き、前のめりにスキルを高めていく姿勢を持つことが重要です。

次回は「テクニック編」として、明日から使える議事録作成のコツをお伝えします。


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