限築杯参加費:詳細版

割と参加者各位が自分の使用したデッキの解説を行っているのを見て「僕も書こうかしら」みたいな気持ちが湧いてきたので後夜祭として筆を執ってみた。

https://note.com/tatibanan7/n/n1219b9339d99

デッキリストはこちらにも上げてあるが文章で上げていなかったので文章に起こす。

4《夜景学院の使い魔/Nightscape Familiar》
2《貪欲なるネズミ/Ravenous Rats》
2《火葬のゾンビ/Pyre Zombie》
4《ファイレクシアの憤怒鬼/Phyrexian Rager》
3《雷景学院の戦闘魔道士/Thunderscape Battlemage》
3《火炎舌のカヴー/Flametongue Kavu》
3《燃え立つ死霊/Blazing Specter》
4《スキジック/Skizzik》
3《墓所の天使/Crypt Angel》

4《終止/Terminate》
2《暴行/Assault》+《殴打/Battery》
1《ギトゥの火/Ghitu Fire》

4《アーボーグの火山/Urborg Volcano》
3《シヴのオアシス/Shivan Oasis》
4《ラノワールの荒原/Llanowar Wastes》
7《山/Mountain》
7《沼/Swamp》

サイドボード
3《十二足獣/Dodecapod》
4《頭の混乱/Addle》
1《雷景学院の戦闘魔道士/Thunderscape Battlemage》
3《殺戮/Slay》
4《シヴのゾンビ/Shivan Zombie》

こちらがデッキレシピ。
紆余曲折あり仕上がったこの75枚、調整している最中は本当にいろいろあった。
まずスタートは環境に多いであろうBBBとドロマーコントロールを倒すために躍起になっていた。
メインボードを勝つだけなら簡単である。シヴのゾンビ、貪欲なるネズミを多く採用し、カードカウントはネズミに加えて燃え立つ死霊と墓所の天使で誤魔化す。これだけでどちらにも有利になる。
どうでもいいことだが、マングースの返しに貪欲なるネズミを出したことはあるだろうか。幼少期に初めて悪戯をしたあの背徳感すら及ばない感情が得られるので非常におすすめである。
そのため一時期はシヴのゾンビ、ネズミがメインボードにフル投入され、メインが勝てるからと割といい気になっていたのである。
しかし、練習時点から土地事故に苛まれることもちらほらあった。
思えば土地25枚で5マナのカードがこれでもかと入っているなど禁忌に触れたマナ基盤だった。当時のデッキレシピは土地の枚数が少なすぎるため、参考にはならない。現代マジックからすれば土地は26枚以上だろう。
さらに、サイド後に十二足獣が出て来たときに苦しい。メインに4枚採用した終止は十二足獣を意識したものだがそもそも無料で5/5が出てきて勝てるわけがない。調整を重ねるに連れて負け筋がたくさん見えてきて一時期はマシーンヘッドとBBBのどちらで出るか決めきれず右往左往していた。
こうなってしまうとネガティブが加速し、BBBの完成されたムーブがとても魅力的に見えるようになる。先行で熊を出して攪乱を構えればそれだけでかなり勝利に近づく。終盤盤面が負けても予言の稲妻ループで勝利をもぎ取る構成は美しさすら覚える。そしてそれは迷走する僕には余りにもまぶしかった。

  ーでも、何故か。 マシーンヘッドが使いたかった。

根っこの部分ではバイアスがかかっていて正常な判断は下せない。
そもそもニュートラルな立ち位置ではいられるはずがない。
かつての僕が、友が、多くを縛り付ける。デッキを選ばせる。
そう、20年前の僕は現在に至るまでの呪いを自分にかけていた。
グレイシャンに苛まれたウルザの様に。
「燃え立つ死霊の苦しみを、数多のプレインズウォーカーへ届けよ」

正直、BBBは得意なクロックパーミッションだし全然悪くはなかった。
だがタイタンスーツより優れた機械を魅せられた僕は、あっさりとドミナリアを裏切ったのだ。

そうして、完成したBBBを捨て、調整は継続された。
かつての偉人たちは非同期の情報を何とかかき集め、デッキを作成していた。しかし令和である。あの当時よりインターネットは発展し、多くの情報がリアルタイムで入ってくる。
限築杯サーバーは常に人があふれている。ドロマーコントロールとBBBが多いのは間違いない。これだけわかっていればマシーンヘッドは勝てるデッキに仕上げられるのではないのか。
そうして「正常だ」と宣い、マシーンヘッドを動作させていった。

油に侵された頭でも、そもそも考えてみればインベイジョンブロック構築は強烈なメタカードが多いため、マッチを意識したデッキ構成がほかのフォーマットのそれよりさらに強い。
・メタゲームを意識したメイン構成
・サイドボード後切り替わるゲームプランを実行できるサイドボード構成
どちらも当たり前ではあるが、これらが果たされていないから弱かったのだ。いつだってトーナメントに出た時サイドボードの交換のプランを持てているときとそうでないときで成績は如実に違うというのに、本質的なところが抜け落ちていた。
この環境には意識しなければならないサイドボードカードが多すぎる。
それらに対応するにはメインの60枚は、相手の15枚を対策をしておく必要があったのだ。

つまるところ目指すべきマシーンヘッドとは
「サイドボード後、十二足獣を対策できる別のゲームプランを持っていること」がまず一番に考えねばならないことだった。
何せ十二足獣は色がない。すべての対戦相手が投入してくる可能性がある。ここで燃え立つ死霊と貪欲なるネズミは強すぎるが故に枚数を減らすことになった。でも燃え立つ死霊は大好きだから、3枚にした。
マナトラブルは26枚目の土地を採用することで解消できる部分もあったが、やはりコントロールに対して苦しいシーンが多かった。
熊で殴ってエンドを繰り返していても、相手とカードの交換を躊躇うことはできない瞬間が来る。その際に4マナアクションをカウンターされ嘘か真かに繋げられればおしまいとなってしまう。ネズミと燃え立つ死霊という、エースが減らされたことによるパワーダウンは大きく、何枚も手札を抱えたまま、何もできずに沈むことが増えてきた。
そもそも土地を増やしてもテンポ面は解消されない。相手が嘘か真かを唱えるターンにファイレクシアの憤怒鬼を出していてはどうしようもないのだ。
ここでVoid系のデッキにするのもありかもしれない、とまたふらついていたのだが、Void系にあって僕のマシーンヘッド擬きにいない生物がいた。
夜景学院の使い魔である。
そもそもネズミが4枚投入されていた時はタフネス1を複数並べるリスクがあったし、役割はマングースをブロックすることしか考えていなかったため採用を取りやめたのだった。
テンポ、不要な土地の削減、減ったネズミの代わりにマングースをブロックする壁。迷走した割に、欲しいカードはずっと前に通り過ぎて見えていなかった。
ここでシヴのゾンビをサイドボードに押し込んだ。ただの熊でしかないマッチは多く、そのくせダブルシンボルである。マシーンヘッドは憤怒鬼さえいれば先手なら沼3枚でスタートしても問題はない。そこに使い魔となればさらにデッキは安定する。SSSでダブルシンボル熊に嫌気がさしていた(あのデッキは!本当に!!回らない!!!)僕は嬉々としてシヴのゾンビをサイドへ押し込んだ。

さて、当初のプランはネズミとシヴのゾンビでBBBとドロマーをメタることだったがすべてが鹿、もとい塵となった。
ここに残された残骸は、果たしてマシーンヘッドなのだろうか。そして当初のパフォーマンスを越えることができるのだろうか。
デッキからの応えは、Yesだった。
3ターン目の燃え立つ死霊、カヴーはゲームプランを滅茶苦茶にする。

そのほか細かい調整は続いた。ロングゲームになったとき、マナフラ受けができるギトゥの火の採用、メインからエンチャントに触れる戦闘魔道士の増量。テンポが悪すぎるウルザの激怒をすべて抜くプラン。
テンポを満たし、引きムラを抑えることができ、さらに翻弄する魔道士で指定されることのない(予見されない)暴行+殴打の採用。
75枚がきっちり構成できたのは、なんとかデッキ登録3日前だった。

最終的にトーナメントはミスが祟り5-2と敗退してしまったが、今でもこのデッキは75枚よく練ったと考えている。殺戮を一枚減らしてもよいかな、程度は思うかも。

最後に。
今までMTGをしてきた中で、三指に入る熱の入れようだった。
嫁に怒られつつ、仕事が終わったら幽鬼の様にPCの前に座る。
自分のデッキを調整するとともに、なまじ当時を知っている人間として様々な人に意見を述べ、デッキ調整の協力を惜しまなかった(おせっかいに感じた人もいるかもしれない)。大会のレベルを上げ、なおその上を征くことが出来るという驕りと自己満足、小さじ程度の憐憫と髪の毛程の優しさで。
今では望むことすら憚られる、あのカードショップの熱が、限築杯サーバーには確かにあった。

2回目があるとすれば、望外の喜びで、是非とも参加したい。

ただ、一つだけ恐れていることがある。

その時の僕は、この情熱を超えることができるのだろうか。

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