因幡はねると織田信姫は何故本田圭佑にクソリプを送ったのか?

 2019年5月末、サッカーの本田圭佑選手(以下、敬称略)のTwitterに下記のようなツイートが投稿された。非常にシンプルだが、彼のサッカーに対する熱い想いと、サッカー業界発展の願いが込められた情熱的なツイートである。

 だが、これに対して、因幡はねる、織田信姫ら、多くのVTuberはクソリプを送っている。そして、その結果、そのリプライのツリーではプチ炎上のような形となり、批判されている。何故彼女たちはこのようなクソリプを送ってしまったのだろうか、というのが本記事の議題である。

 なお彼女たちふたりだけの問題ではないが、特に名のあるVTuberであるため、特別に取り上げさせていただくこととする。また、本記事は烏丸さきの意見に概ね同意する内容であるため、できればまずはこちらの動画を観ていただきたい。

 本田圭佑のツイートはネタツイートだったのか?

 まず前提として、本田圭佑のツイートがネタだったのか否かを確定させる必要がある。反論として「本田圭佑のネタツイートにネタで返しただけではないのか?」というものがあるからである。しかし、本田圭佑は数日後に下記のようなツイートを投稿している。

 このツイートを読んでもなお、「本田圭佑のツイートはネタだった」と主張するのはかなり苦しい。そもそも本田圭佑という男は非常に生真面目であり、サッカーに関してはほとんど冗談を言うような性格ではない。失礼ながら、その口ぶりはビックマウスだなどとの批判もあったが、確かな結果を残すことでその批判をはねのけてきた男である。

 動画の無断転載であったり、真偽が確かめられない情報が含まれたりしているので、ここでは取り上げないが、「本田圭佑 名言」などで検索していただければ、上記の事実は実感していただけると思う。

 尤も因幡はねる、織田信姫に関しても、その程度のことが分からなかったとは思えない。誤解して欲しくないのは、彼女たちにはアンチも多いが、ファンの人心掌握に非常に長けたVTuberということである。因幡はねるはリスナーのひとりひとりを非常に大切に想っているし、織田信姫もファンを煽るのが上手く、どうやらFANBOXの有料会員などで非常に稼ぎがあるらしいことが分かっている。


pixivさんにはFANBOXでお世話になっており、家臣たちから多くの支援をもらっています。BOOTHでのグッズ販売も2月から始めたのですが、こちらも売上がよく、家臣たちも喜んでくれるので今後もやっていきたいと思っています。
ある程度コンテンツを充実させる必要はあると思いますが、FANBOXで数十万円程度の支援をいただくことは、VTuberにとっては比較的簡単なのではないかという体感です。たとえば動画を制作して同じ金額を稼ぐということを考えれば、ということですね。

 因幡はねる、織田信姫らのリプライはクソリプなのか?

 では、次に因幡はねると織田信姫らのリプライがクソリプと言える類のものであったのかを考えていこう。ここで考えられる反論は、「同じサッカー選手の長友佑都らもネタにしているんだからいいじゃないか」というものである。

 だが、これに関しては、先に取り上げた烏丸さきの意見に同意である。それは「同じサッカー選手ならばまだしも、VTuberという立場で乗り込んで行ったら一般人からは良く思われない」というものである。

 そもそも少なくとも長友佑都に関しては、完全なネタとしてリプライを送ったわけではない。本田圭佑と同様にフィジカルトレーニングを教えるというツイートを投稿し、実際に実行している。

 これでは、ただただ軽いノリでリプライを送ったVTuberらは自己顕示欲だけが肥大化した存在であり、彼らのようなプロのアスリートの真剣さとは比ぶべくもない存在であるということになってしまう。VTuberファンとしても、界隈全体がこのような評価を受けてしまうということになれば、とても容認できるものではない。

 そして、もし仮に因幡はねると織田信姫らのリプライが本気で本田圭佑に対して教えを乞うものであった場合でも問題だ。本田圭佑は「本気でワールドカップを優勝したいという人」に条件を絞ることを宣言しているが、如何に本田圭佑が天才であったとしても、バーチャルの世界からリアルな世界のワールドカップ優勝を狙える選手を育成することは困難だろう。

 つまり、もし本気でワールドカップ優勝を狙うのであれば、VTuberらはバーチャルの世界からリアルの世界へと進出してもらわなければならない。そして、ワールドカップ優勝を狙うということは事実上、VTuberとしては引退するということだ。それは彼女たちを支えてきたファンへの裏切りであり、これもまた容易には容認できることではない。

 因幡はねる、織田信姫らの目的はなんだったのか?

 さて、ここからようやく「何故因幡はねる、織田信姫らは本田圭佑のツイートにクソリプを送ったのだろうか?」という本題に入る。まずすでに述べたように、彼女らのリプライが本気であった場合でもファンへの裏切りという問題があるため、これはネタとして送ったクソリプとして判断せざるを得ない

 では、ネタとして大いに受けて、ファンたちを爆笑の渦に巻き込んだのだろうか。それもまた答えは否である。烏丸さきは「(賛否両論の)賛はVTuberファン(から寄せられたもの)」としているが、実際にリプライを辿ってみるとVTuber側からも否の声があがっており、彼女らを擁護する声はほとんどない

 しかし、このような結果になることを、因幡はねる、織田信姫らが想定できなかったとも、私は思えない。この点に関しては、烏丸さきは「一般人の目に触れること」が目的だったのではないかと推察しており、私もそれは全くない話ではないと思うが、大きな目的だったわけではないだろう。
 因幡はねる、織田信姫らの方針は、上記で取り上げた記事でも分かるように、限られたリスナーを大事にするものであり、一般人へのアピールをする意味は薄いからだ。

 ここで気になるのは、VTuberに関する好意的な記事を多く掲載している『KAI-YOU.net』では、本件に関してもVTuberに対して好意的な反応を見せているということだ。

 そして、おそらくだが、本記事はVTuberに詳しくない一般人よりも、VTuberファンから多くの認知を得たのではないかと推察される。このような反応を得ることこそが、因幡はねる、織田信姫らの目的だったのではないかと私は思う。

 彼女らはすでに人気VTuberではあるが、VTuber界隈はそれぞれの事務所やグループ(いわゆる箱)ごとでの隔絶が激しく、常に話題を提供しないと他の箱のファンからは忘れ去られてしまう。如何に彼女らが限られたリスナーを大事にする方針だとしても、それでは先細りになるばかりである。そうならないため、有名人のツイートに対する便乗でもなんでもする、という方針は戦略としては理解できないものではない。

 総論

 とは言え、こうした戦略は信用を切り売りする炎上商法と呼ばれるものである。一時的に話題となり注目を集めたとしても、その先はない。常に炎上し続けることでしか話題を生むことができない、そんなVTuberに堕ちてしまうだけだ。

 特に織田信姫に関しては、この点に関して重々承知の上であるはずだ。彼女は2018年末にVTuber34名に対して行われたアンケートでは下記のように述べている。

どんな手段を使ってでもまずは勝つ、ルールの範囲内なら全てを実行する、昔からこの考えで生きているのでとにかく色々な手段で露出する方法を考えました。
注目を浴びるという事は同時にヘイトも買いやすいですが、それは戦において当たり前の事なので気にせず好き放題突っ走ったら沢山の応援してくれる家臣を手に入れました。

 この点に関しては非常によく分かる。なんの知名度も信用もない中で、登録者数18万人以上の人気VTuberに登り詰めたその手腕は称賛するほかない。私としても彼女に対して絶賛するような記事を執筆しようかと考えていたほどだ。しかし、下記のコメントは見過ごすわけにはいかない。

今までと同じ現状維持は簡単です、しかし現状維持は周りが成長するので後退に等しいと思っています。

 さて、今の織田信姫はどうだろうか。「炎上キャラ」という現状に甘えて、軽率な発言が目立つようになっていないだろうか。もうすでに多くのファンと、織田信姫というブランドを得た以上、次なるステップへと進むべきだと私は考える。

 初期の炎上ネタに関しては、VTuber、あるいはYouTuberなど同業者に向けられたものであり、それに関しては大きな問題だとは思わないが、本田圭佑の場合はそうではない。

 確かに「本田とじゃんけん」の人気により、「本田圭佑ならネタにしていい」という空気がネット上に生まれたことは確かである。だが、彼はタレントですらない、プロのアスリートだ。そんな彼の真剣なツイートに対してクソリプを送るという行為はすでに「後退」が始まっている証左ではないかと考える。

 そもそも今回の件、このようにプチ炎上程度で済んだのは、本田圭佑が非常に寛容だったからである。「真剣なツイートなので茶化すようなことは辞めてください」、あるいは「本気で僕に教わりたいならリアルな世界に出てきてください。本気で教えますよ」などと言われていれば、大きな炎上とまではいかないまでも、因幡はねると織田信姫らは火傷を負っていたはずだ。
 そうした反応をしても、なんの不道理なこともなかったのに、寛容な態度を取ってくれた本田圭佑には感謝の言葉しかない。そして、VTuberファンのひとりとして、私も烏丸さきと同じく謝罪の言葉を述べたいと思う。

 彼女らだけではなく、今回本田圭佑にクソリプを送ってしまったVTuberらに関しては自身のブランドに対する甘えは捨てて、次なるステップへと進んでもらいたい。あるいは、烏丸さきの意見の通り、せめて面白いリプライを送ってもらいたい。「本件はわざわざ取り上げることなのか?」とは私も悩んだが、ボヤ騒ぎで済んでいるうちに自身の活動を見直すべきだろう。今後の彼女たちの活躍と、VTuber界隈の発展を願う。

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