数字より大事なのは熱量だ。だからこそ数字の話をしよう

 これまで私はnoteにて、VTuberの動向について動画再生回数やスパチャ額など具体的なデータから客観的な分析をするように心掛けてきた。そして、同時に3D化によるお祭り騒ぎやジェムカンの動画的見栄えの良さなどに触れ、数字では読み取れない熱量もあると説明してきたつもりだが、この熱量という概念については深く掘り下げてこなかったため、本記事で整理していきたいと思う。

 数字はもちろん大事な要素である

 まず誤解なきように言っておきたいのは、「数字は大事ではない」ということはないし、だからと言って「数字がすべてである」などということもない。インターネットでは何もかもが0か10かで判断されがちであるが、そうした極論にならないように心掛けていきたい。

 そのうえであえて言いたいのは、VTuber関連ではない企業や、VTuberファンではない人たちがVTuberについて知りたいと思って真っ先に見るのはまず登録者数だろう。いや、VTuber企業にしてもなんのつながりもないのに突然、登録者数1万以下のVTuberにコラボ提案などをするかと言うと、それもあまり起こらないことだろう。

 もちろんこれも根拠なく言っているわけではない。たとえばNHKで放送された『NHKバーチャルのど自慢』でも出演者であるVTuberの紹介の際には登録者数も同時に掲載されていたし、電脳少女シロがレギュラー出演するテレビ朝日『超人女子戦士ガリベンガーV』でもミライアカリ、猫宮ひなた、月ノ美兎がゲスト出演した際に、出演者全員の登録者数合計が200万以上であることが大々的に紹介されていた。
 にじさんじに至っては、公式ホームページや公式アプリ『いつから.link』のライバー一覧でも登録者数順で掲載するという徹底ぶりだ。そのように登録者数を売りにすることに関しては批判もあるものの、まず数字で説得力を持たせるのは利益を追求する企業としては正しいやり方であると思う。

 また、こうした考え方はVTuber業界に限ったことではない。いわゆる「登録者買い」と言われる行為も間違いなく存在するし、カジサックことキングコング梶原も「2019年末までに登録者数100万人いかなかったら芸人引退」と宣言しているし、そもそも登録者数が上だとか下だとか言われた際になんらかの感情の揺らめきを感じたのであれば、それこそ登録者数が人の心に作用するという証拠だろう。

 熱量があるからいいというわけでもない

 だが、こうした数字を持っていないVTuberが突然人気沸騰、話題沸騰になることもよくあることだ。いわゆる「バズる」という現象である。たとえば花譜(かふ)は2018年10月18日に動画初投稿を行っているが、2018年12月28日に投稿された下記の動画投稿をきっかけに、当該動画の再生回数はもちろん、登録者数も一気に伸びていった。

 だが、バズった当初、数字の魔力に惑わされた人々が「工作ではないか」などとする、根拠不明な誹謗中傷もみられた。こうした騒動を受けて、花譜運営チームが急遽Twitterを開設し、正式な手続きを踏んだうえで広告出費を行っていたことを明かし、これにて騒動は終結したと言えよう。

 そして、今となっては乃木坂46・堀未央奈が主演を務める映画『ホットギミック』の主題歌を担当するなどしており、人気VTuberのひとりであることは疑いようがないが、数字が伸びたことによって悪目立ちしてしまうこともあるという一例でもあった。そして、同時に十分な実力を兼ね備えていても、まず数字が伸びなければ注目されなかったということでもある。

 数字を熱量で乗り越えた先にあるのも数字である

 さらに、特殊な事例であると言えるが、『機動戦士ガンダムSEED ASTRAY』に登場する機体「レッドフレーム改」に似ていることからバズり出した斗和キセキというVTuberもいる。

 彼女のTwitter運用の巧みさについても触れたいところではあるが、詳細には語らない。ひとつだけ言えるのは、彼女はこの熱量を存分に活かし、一過性の人気にはとどまらない地位を築きつつあるということだ。

 そして、同時に「インスタをやるために斗和キセキのめちゃくちゃリアルな生首を作りたい」プロジェクトにて、14,757,500円のクラウドファンディングによる支援を受けたことも見逃せない。ここでもやはり評価基準のひとつとして、支援金額という数字が登場している。如何に巧みに熱量を活かす活動をしていても数字による評価からは簡単には逃れられないということでもある。そもそも数字と熱量は密接な関係があるのだ。

 「数字マウント」が嫌なら熱くなれ

 ところで、個人的には不思議なことであるが、こうした数字の話をすると「数字がすべてではない」とか「数字でマウントを取ろうとするな」などという反応が返ってくることがある。他のVTuberとの比較でもなく、数字だけでは読み取れない魅力について同時に語っていたとしてもである。

 正直なところで言えば、今のVTuber界隈は少々数字に関して敏感過ぎると思う。ただ、数字そのものに価値を見出すことに関しては私も否定したい。「数字はもちろん重要であるが、数字だけがすべてではない」という態度は矛盾なく成立するだろう。数字の話をすると、1から10まですべて数字で評価していることになってしまうという風潮は望ましくない。

 しかし、そもそも何故ここまで数字が気にされるのかと言えば、VTuberの多くは数字をまだ持っていないからである。だいたい登録者数が10万人いっただとか、動画再生回数20万回だとか、その程度の数字は動画界隈全体で見れば微々たるものであり、VTuber同士での比較くらいにしか使えないだろう。私が動画再生回数や登録者数などは、たいして重要ではないと思うのは単純にまだたいしたことがないからである。

 こんな程度の数字は所詮どんぐりの背比べにしか過ぎない。だからこそ、VTuberが文化として発展していくために、より一層数字を伸ばしていって欲しいと願う。現状のままでは一般層からは珍獣扱いか、小馬鹿にされるだけで終わりだ。VTuber同士で競ったところでたいして意味はない。「比較して語ることもあるが、競い合う必要はない」というのもまた矛盾はしていない意見だろう。VTuber界隈の数字が伸びることが一番なのは言うまでもない

 そして、それでも数字の話が嫌いな人たちは、数字をはねのけるほどの熱量を持って推しのことや今後のVTuber文化の発展などについて語ってもらいたい。別にテーマに捉われる必要はなく、好きなことを好きなように語ればいい。わざわざ言う必要もないが、当然それは表現の自由である。

 ともかく【VTuberは廃れた論について。なんかそういうデータあるんですか?】で述べたように数字で見ても業界全体は順調に発展しているし、VTuberは数字だけでは説明できないことを成し遂げてきたことももちろん事実だ。あなた方が彼女たちを信じ続けてくれれば、この先も数々の夢と奇跡を見せてくれるはずだ。健闘を祈る。

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